日々の生活が苦しくて、食の支援を受けられたらな..
という方へ、このインタビュー記事をお届けします。
今回お話を伺ったのは、NPO法人日本もったいない食品センターの代表理事である高津さん。
食品ロス削減を通じ、ひとり親世帯を含む生活困窮者への食支援に取り組まれており、事業者から集めた「廃棄される予定の食品」を販売する食品ロス削減ショップ ecoeat(エコイート)を全国で展開されています。
「食品ロス」と「貧困問題」のどちらもゼロにすることを目指されている高津さんに、活動の詳細や想いを伺いました。
※動画で視聴したい方はこちらからどうぞ
食品ロス低減を通じた生活困窮者への食支援
− ReRe
活動内容や、高津さんの自己紹介をお聞かせください。
− 高津さん
日本もったいない食品センターの代表をしております、高津と申します。
大きな活動目的が2つありまして、 1つ目が食品ロスの削減、2つ目が生活困窮者の支援、つまり貧困の解決を目指しております。
自己紹介としては、今現在46歳で、前職は国家公務員をしていました。
そして、27歳で会社を起業し、20年目を迎えるんですけども、今現在も続いています。
その会社との関わりが、NPO法人の立ち上げ時も含め、主に活動費の捻出において重要な役割を担ってもらっていました。
会社の手助けもあり、人件費ゼロで運営することができています。
前身は私が今も運営している会社の慈善活動、ボランティア事業がNPO法人化されて、今に続いているといった流れになります。
設立自体は2017年2月なのですが、活動自体は2015年の暮れぐらいから始まっています。
− ReRe
詳細をありがとうございます。
生活困窮者の方に廃棄する食品を届ける活動をされているかと思いますが、詳しく教えていただけますか?
− 高津さん
廃棄する食品を届ける、ではないですね。
食品ロスの定義って、わかりますか?
− ReRe
人の手に届かない食品、でしょうか?
− 高津さん
食べられるものの廃棄、のことですね。
つまり、食品ロスとして食べられるものの廃棄がたくさんあって、逆に食べられないものの食料廃棄もあるわけです。
食品ロスとして廃棄される可能性が高かったもの、つまり我々が引き受けなければ、捨てられていたかもしれないものを有効に活用しよう、ということで食料支援などで使っています。
− ReRe
ありがとうございます。
どういった団体、人に渡るように活動されていますか?
− 高津さん
対象は個人と団体の両方に支援していまして、ホームページの毎月の活動報告で「今月は5団体に寄贈しました」「600世帯の家庭に配送しました」と紹介しています。
その入り口のほとんどは、ホームページからになりますね。
「食料支援」とGoogleで検索すると、うちの団体が上のほうに表示されるので、そこから入られて申し込まれるパターンです。
あとは、パソコンを打ち込めない人もいるので、代理で申し込まれたりとか。
そのほか、市役所や社会福祉協議会などからの紹介、相談も多いです。それらを全国すべて対応しているんですが、ecoeat(エコイート)が出店されていない地域は、大阪の本部から毎日全国に宅急便で送っています。
エコイートがある地域であれば、近くの団体や周辺に住んでいる場合は取りに来ていただいたり、もしくはecoeat(エコイート)のスタッフが持っていったりしています。
食品ロス削減ショップecoeat(エコイート)
− ReRe
ecoeat(エコイート)について、ご説明いただけますか?
− 高津さん
ecoeat(エコイート)は食品ロス削減のためのショップで、「本部に代わって地域に貢献すること」を目指しています。
目的は3箇条あり、1つ目が困窮者支援などの『地域貢献』です。
そして、2つ目が『啓発活動』です。買い物に来ていただいたお客様に、食品ロスを削減するために「◯◯までは食べられますよ」という食品の正しい知識を知ってもらい、知識を得たうえで「捨ててたら、もったいなかったよね」と気づいてもらいます。
そうすることで「もったいない」という意識を高めてもらい、個人のロスを減らしています。
3つ目は、『活動費を自分たちで捻出していくこと』です。
良いことをしようと思ってもお金がかかってしまうのは事実で、当団体は寄付金を個人の方や企業様から頂いてはいるんですけど、寄付金がなくても自分たちの活動を継続維持するために、ecoeat(エコイート)の売上収益を我々の活動費にしています。
− ReRe
食品ロスの食品を販売することで、活動費を捻出されているんですね。
− 高津さん
そうですね。わかりやすく簡単に言うと、主に事業会社の食品ロスとして廃棄される可能性の高いものを我々が引き受ける、もしくはお金を払って買い取ります。
それを生活困窮者への配送とecoeat(エコイート)での販売に分けていて、ほとんどはecoeat(エコイート)で販売しています。
事業会社の食品ロスは引き受けることで減り、買い物に来られたお客様に知識と意識を高めてもらう啓発活動によって、個人のロスは減ります。
販売の過程で利益を出す努力をしていまして、利益を活動費に当てていく、といった仕組みです。
− ReRe
よくわかりました、ありがとうございます。
ecoeat(エコイート)に買い物にいらっしゃるお客様は、どういった方が多いですか?
− 高津さん
もちろん地域性はありますが、やはり女性の方が多いですね。休みの日とかは、家族連れが多くなったりとか。
最近は、お子さんだけで買いに来られることもありますね。
昔は特に「賞味期限が切れているものを小学生に売ってしまうのはどうなのか」ということを、最初にいろいろ話し合いました。
そして、運営していくうちに「理解も深まってきたし、第一に変なものをお渡しするわけじゃなくて、味すら変わらず美味しく食べられるものを販売しているから、問題がないだろう」ということで販売をしていますね。
− ReRe
在庫は全てお客様の手に取っていただけて、完売するのでしょうか?
− 高津さん
よく「廃棄ってどれぐらいされてますか?」と質問されるんですけど、我々の食品ロスとしての廃棄はゼロです。
先日もハリボーのグミを2ヶ月で合計35万個ぐらい買ったんですが、在庫が多いので、ecoeat(エコイート)で最初から安売りするんです。
ディスカウントショップっていうわけではないんですけど、おいしく食べられる間に消費しないとダメなので、同時並行で食料支援へもバンバン出していくわけです。
それでも残りそうだったら、お店で無償配布することもあります。
「今週中に食べてくださいよ」とお伝えし、お客様に「賞味期限がこんなに過ぎてるのに全然大丈夫だった」と思ってもらえると、啓発にもつながります。
我々が捨ててしまったら本末転倒ですし、「有効に使おう」ということで何とか捨てずにいられています。
− ReRe
廃棄ゼロというのは、取り組みの理念にもかなっていて、素晴らしいなと思います。
子ども食堂への提供も
− ReRe
ecoeat(エコイート)以外の食品提供先として、どういった団体が多いですか?
− 高津さん
皆さんが最近よく耳にするところで言うと、子ども食堂さんはすごく増えましたね。
市や区単位で『子ども食堂の連合会』『子ども連絡会』といった、Lineグループのような組合があるのですが、そこへ参加して「こういった食品が入ってきましたけど、要りませんか?」という情報を発信し、近場の場合は取り来ていただいたりもします。
あとは、社会福祉協議会を介して指定された場所へ送ったり、社会福祉協議会にまとめて納品し、社会福祉協議会から何十団体に配ってもらうことも多いですね。
先ほどホームページに「今月は5団体に寄贈しました」などが書いてあるとお話しましたが、1つの団体が30人ぐらいを対象にしている小さな子ども食堂さんの場合もあるし、1つの社会福祉協議会を指している場合もあります。
さらに、社会福祉協議会から50団体に寄贈した食品が、末端では5万世帯に配られている、といったケースもあります。
サラっと書いているので、わかりにくいかもしれないんですが。
食品の提供では、時間も配送費もかかりますが、我々は少ない予算で良いパフォーマンスを発揮したいと考えています。
限りあるお金を有効に使って、少ない金額でいかにたくさんの人たちに届けることができるか、を大事にしています。
一番かかっている費用が、食品を仕入れているお金ではなくて、物流費なんですよ。
人件費は、ecoeat(エコイート)のスタッフの給与以外はゼロで、各店舗のフランチャイズオーナーに就業の雇用の中でボランティアとして慈善活動を手伝ってもらったり、うちの会社のスタッフが電話対応や出荷作業を手伝ってくれています。
そのため、人件費はゼロなのですが、食品を宅急便で送るとなると宅急便代がかかってくるわけなので、特に家庭に送る場合にすごくかかりますね。
みかん箱一つを4人家族の家に送るとしたら、中身の食品代より宅急便代の費用のほうが高いんです。
− ReRe
そんなにかかるんですね。
− 高津さん
以前、沖縄にecoeat(エコイート)の店舗ができるまでは、本部がある大阪府摂津市から沖縄に配送していたんです。そうすると、宅急便代で1,500円〜2,500円くらいかかるんですよ。
中身の食品は300円ぐらいで用意できるので効率は悪いんですけど、広く浅く全国をフォローしながら、ecoeat(エコイート)ができていけば、支援の総量を増やしていけるだろうと思っていて。
ecoeat(エコイート)は物流拠点として活用でき、活動費を抑えながら低予算でたくさんの人たちに食品を届けることができるので、店舗を増やしていこうとしています。
− ReRe
本当に素晴らしい取り組みですね。
ひとり親家庭への支援
− ReRe
ひとり親家庭への支援として、何か感じることや、活動の中で目にされたことはありますか?
− 高津さん
食品の提供先として、ひとり親家庭はやっぱり多いですね。
一人で暮らしてる男性や父子家庭も対象として支援しているんですけど、その中でも母子家庭が大多数を占めています。
自治体と一緒に支援をさせていただくときも、自治体が支援の対象としているのは母子家庭のほうが多いですね。
生活保護をもらっている方は、二重の支援になるので、対象外になったりすることはあるんですけど。
先日も、大阪府の門真市さんと連携して支援をした際も、母子世帯の方へ「お困りごとはないですか?」「食品は要りませんか?」とアンケートをとっていただき、そこで「ほしいです」と言われた方に協力して食品をお配りしました。
そういったイベントとして食品を配るときも、対象は圧倒的に母子家庭が多い状況です。
− ReRe
母子家庭の方から、直接的に支援の依頼が来ることもありますか?
− 高津さん
もちろんです。
直接的な依頼のだいたい半分以上が、母子家庭の方からですね。
母子家庭にスポットを当てて支援をしているわけではなく、母子家庭以外で困っている方も含めて食品をお渡ししています。
老夫婦の方もいるし、一人暮らしで怪我をして働けなくなって、保険にも入っていなくて困っている方へも支援をしています。
そんな中でも、市や社会福祉協議会などを経由しての支援も含めて、対象として母子家庭の方は多いですね。
− ReRe
個人も団体も規模感を問わず、幅広く支援をされているんですね。
活動を特に知ってほしい人
− ReRe
活動について、特にどのような方に知ってもらいたいでしょうか?
− 高津さん
私は取材を毎週のように受けることが多くて、その中には学生さんも多いんですよ。メディア以外でも卒業論文であったり、大学のゼミであったり、高校の探求の授業であったりとか。
そこで、学生さんによく言うことがあるんです。
君たちは努力をして、立派な大学に入って良い勉強もして、質問内容も素晴らしく、理解もある。
けど、奨学金で大学に行くことができている場合もあるだろうし、親が学費を出してくれている場合もあるかもしれない。
一方で、そのような状況に立つことができていない人も、たくさんいる。
そんな中、特に今学生で時間があるときや、社会に出て少し落ち着いた後でもいいから、ボランティアを含めて社会貢献をしていったほうがいいよ。
そうすると「自分より大変な人たちがいっぱいいるんだ」と知ることになり、「今の自分があるのは、いろいろ手助けしてくれていた両親や、自分のことを思って小言を言ってくれた人の存在があったからなんだ」と気づけるから、と。
そうすると、いろんなことに対して感謝できるようになるんです。
この気持ちは社会に出てからも重要で、生活が大変な人がその環境下で頑張っているのなら「自分も何か少しできることがあるんじゃないか」って思えるようになります。
そこで、最初は自己満足でもいいから、ボランティアに行ってみてほしいと思います。
社会福祉協議会のホームページなどでは、ボランティアの募集情報もたくさん載っているので、ぜひ皆さんに参加してほしいですね。
ひとり親へ伝えたいこと
− ReRe
ひとり親の方に伝えたいことはありますか?
− 高津さん
ひとり親で、特に子どもが赤ちゃんの場合は、何で泣いているのかわからないときもあるだろうし。
もちろん、ある程度育ってきて可愛い時期もあるでしょうけど、一人だと相談もできないし、すごくストレスが溜まるときもあると思うんですよね。
さらに、経済的にも苦しいと。
それらを乗り越えて乗り越えて、しっかりと愛情を注いだ子どもたちが育てば、今度は可愛い孫を連れて帰ってきてくれるかもしれません。
本当にずっと我慢をしているというのはわかっているんですけど、あともう少しなので、頑張ってほしいと思います。
− ReRe
温かいメッセージをありがとうございます。
私自身も一人親ですが、確かにひとり親には大変な時期がありますね。
高津さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
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