キャバクラで働いてるけど、将来が不安..
同じ夜業界にいる人に相談したい..
という方へ、このインタビュー記事をお届けします。
インタビューさせていただいたのは、夜業界で働くシングルマザーを支援するハピママメーカープロジェクトの石川さん。
石川さん自身も夜業界で働いたご経験があり、食料の無償提供などを通じ、多くのシングルマザーの孤独を解消したり、問題解決へと導かれています。
また「当事者同士の横のつながり・行政とのパイプ作りをしたい」と、経験者だからこそわかる、夜業界で働く女性に寄り添った支援活動もされています。
「夜業界で働くシングルマザーが、自信・誇りをもって安心して働ける社会を作りたい」という石川さんに
- シングルマザーへの支援活動の詳細
- 支援を受けたシングルマザーの声
- 支援活動への想い
についてお伺いしました。
夜業界で働くシングルマザーへ、食料の無償提供・相談・交流を支援
− ReRe
自己紹介をお願いします。
− 石川さん
ハピママメーカープロジェクトの石川と申します。
18歳から夜業界で、主にキャバクラ店のキャスト・黒服(キャバクラ店で働く従業員)として10年以上働いてきました。
特に黒服時代、そこで働く女性たちからの悩み相談を受け、課題感を感じました。
シングルマザーの方が多い店で働いてきたこともあり、フルタイムで働けなかったり、悩みがあっても行政への相談に心理的ハードルを抱えている女性たちと出会ってきました。
私は、大学卒業後、市役所の公務員として働き、その後大学在学中からの鬱病が悪化する等が原因で公務員を退職し再度夜業界に入りました。
そんな経緯もあり、役所仕事を短い間ですがしたこともあり、余計に夜業界で働く中で、行政機関と夜業界で働く人たちとの距離感を感じました。
夜業界の場合、同じ課題感を抱えているシングルマザー同士であっても、なかなかお店で具体的に相談しあったり、関係構築しづらいんです。
「女性を個人事業主として雇っている」という立て付けなので、時給も違えば待遇も違う。お客様の奪い合いなどのトラブルを防止するため、お店側も女性たちが密になることを避ける傾向にあるからです。
孤立化しやすい夜業界で働くシングルマザーに対し、自分の経験・行政に関する知識を活かして、店の外での横のつながり・行政へのパイプづくりをしたいと思いました。
また、コロナによって、私自身が働くキャバクラ店も縮小・閉店に追い込まれました。
系列店も7店舗→1店舗に縮小し、私たち黒服も前月までの給料が半額になったり、キャストの女性も給料未払いになるといった現状を目の当たりにしてきました。
私も生活が苦しくなってはいたのですが、お子様をかかえるシングルマザーの窮状を実感し、フードパントリー(食料の無償提供)の活動を開始しました。
それが、ハピママメーカープロジェクトの発足当初ですね。
− ReRe
ありがとうございます。
「キャバクラ店では横のつながりが作りづらい」というお話がありましたが、業界全体にいえる話なのでしょうか?
− 石川さん
そうですね。
女性同士がライバルでもあり、キャラを作ってお客様に接客しているので「シングルマザーです」といった身の丈話を打ち明けにくいんです。
仮に身の丈話をして、それを聞いた女性が悪意はなくてもお客様にポロッと言ってしまうと、トラブルにも発展しかねません。
待機中に女性同士が話すのも良くないとされているし、女性たち自身があまり伝えないという面もあります。
− ReRe
業界のシステム上、女性同士で素の会話がしにくい状況にあるんですね。
そんな中、フードパントリーを中心に支援活動をされていますが、詳細を教えていただけますか?
− 石川さん
現在のメインはフードパントリーですが、そのほかに勉強会・行政相談・弁護士相談・交流活動もやっております。
今後は「弁護士に相談したい」という方へ、弁護士の先生が直接お伺いして話を聞き、その際に食材もお届けするような事業も準備しているところです。
あと、お母さんが別の部屋でお茶したり休んでいる間に、子供の面倒を見れるような託児施設の準備も進めています。
− ReRe
託児施設はどのエリアで計画されているのでしょうか?
− 石川さん
埼玉県の西川口ですね。
医療機関・町会長さんとの地域連携も構築中で、実際に川口診療所さんが会場の設営・提供にご協力くださったりもしています。
− ReRe
素晴らしい取り組みですね。
確定申告は、シングルマザーの身の安全保障につながる
− ReRe
弁護士相談について「何を相談すればいいかわからない」という方もいるかと思いますが、何かお伝えできることはありますか?
− 石川さん
「何を相談すればいいかわからない」というよりは、漠然とした不安を抱えている方が多いんですね。
「水商売=その日暮らし」という面はあり、賃貸一つ借りるのもハードルが高いですし、給料保証がないので体調不良などで出勤できなければ給料ゼロとなり、不安定です。
社会保障も国民健康保険なので自己負担が大きく、手取りも少なくなって不安定な状況下におかれている方はたくさんいます。
そういった方たちに対し、「何が相談したいか」というよりも「とにかく何でもいいのでお話しに来てほしい」という思いがあります。
話がわかる者同士まずは少しお話をしたり、とりあえずLINE@だけ登録してもらって、何かあったら一言「不安なんです」と連絡してほしいなと思います。
− ReRe
漠然とした不安を抱えたときに気軽に頼れる存在がいることは、シングルマザーの方にとっても心強いですね。
昨年女子SPA!さんのインタビューを受けられておりますが、その中で「確定申告の大切さ」を伝えられていて、勉強会も開かれているかと思います。
詳細についてお伺いできますか?
− 石川さん
なぜ勉強会を開くかというと、一つは「夜業界の納税率が悪く、義務を果たすべき」という点と、もう一つは「確定申告は身の安全保証につながる」という点です。
なぜ、夜業界の方が行政・支援機関に相談しづらいかというと「確定申告をしていないから」という面もあります。
保育支援を利用するにしても収入証明が必要ですし、ただでさえ夜の仕事に対する偏見も強い中「納税してません」となると、さらに相談しづらくなってしまいます。
確定申告って、納税さえすれば「キャバクラ店で働いてます」と言わなくてもいいんですよ。「接待業」みたいな形で申告できるので。
一つの「社会的ステータス」にもなるので、確定申告する意識を夜業界の方に広めていきたいなと考えています。
− ReRe
ありがとうございます。
「いつか夜業界を抜け出したい」というシングルマザーの方にも、やはり確定申告は重要でしょうか?
− 石川さん
そうですね。
顕著だったのが、コロナ禍での「持続化給付金」をはじめとする補償です。
性風俗事業者はまだ対象外のままですが、シングルマザーを含む女性キャストや黒服は途中で各種補償の対象に変わったんです。
ただ、「前年度分の収入証明書を提出してください」というルールがあったので、確定申告をしていなかったシングルマザーは給付金をもらえない、という状況が多くありました。
それでも違法にもらおうとして、足元をみられて詐欺にあってお金をだまし取られるなんて方もいました。
その方にも問題はあるとは思いますが、「それってダメだよね」で終わらせるのではなく、「どうすれば、その問題を少しずつ解決していけるのか」を考えるべきだと思っています。
「ダメだよね」で終わらせても、その後ろにいるお子さんたちは救われません。
夜業界でしか働いてきたことがないという方もたくさんいる業界です。成育歴も複雑な方もいらっしゃいます。
よく社会の仕組み、置かれている立場(自分たちが個人事業主として雇われている等)もわからないままに、働いている方もいます。
なので、少しずつでいいので、確定申告などの勉強会へも気楽に参加してほしいなと思います。
国民健康保険や交通費、ドレス代、ヘアメイク代など経費がとにかくかかる業界なので確定申告することで、お金も還付される、戻って来る方も多いと思います。
− ReRe
支援を受けられる対象なのに受けれないのは辛いですし、ぜひ多くの方に参加してほしいなと思います。
相談者の声「応援してくれる人の存在を実感できて有り難い」
− ReRe
相談・支援を受けられたシングルマザーの声もお聞かせいただけますか?
− 石川さん
「何を相談していいかわからないし、何か言っても否定されるかもしれない」と思っていた方が、弁護士相談を初回無料枠で一度受けるだけで「そういうことだったんですね!解決しました!」とホッとしていただいたりとか。
「昼間の仕事に向けて、就職活動を頑張っていけそうです!」というお声もありますね。
「頑張りたくても孤独感で一人では息切れしてしまう状況の中、食料一つ送ってくださることで応援してくれる人がいることを実感でき、有り難いです」というお声も頂いています。
− ReRe
素晴らしいことですね。
相談でいうと「行政相談に行ったら、現状を非難された」というシングルマザーの方もいて、夜業界で働く方だとそういった経験をされている方はより多いかと思います。
そういった状況に対しては、どのように感じますか?
− 石川さん
せっかく勇気を持って相談に行ったのに「お子さん可愛そうだね。そんな仕事早く辞めなよ。昼間の仕事ちゃんと探してるの?」と言われたりとか。
1回そういう経験があるだけで「もう相談する気力をなくしちゃった..」という方は確かにいらっしゃいますし、気持ちはわかります。
ハピママメーカープロジェクトは、私自身が夜業界で働いている当事者ですし、スタッフも夜業界で働くシングルマザーの方がいます。
弁護士・社会福祉の先生も理解のある方にお願いしているので、「相談したら非難される」という心配はいらないです。
− ReRe
シングルマザーというだけでなく、同じ夜業界での経験があり、理解してくれる方がいるというのは安心できますね。
夜業界で働くシングルマザーにも、100人いれば100通りの背景がある
− ReRe
夜業界で働くシングルマザーを取り巻く社会・支援体制について、何かお感じになっていることはありますか?
− 石川さん
団体の活動をニュース・メディア様に取り上げていただく中で、批判の声もありました。
「自己責任でしょ」「昼職のシングルマザーのほうが苦しい。何で夜職の高給取りの人たちを支援するんですか」とか。
夜業界の中でも、すごく稼いでいる女性もいれば、事情があってあまり出勤できずに稼げていない方もいますし、時給換算すると最低賃金以下で働いている方もいます。
実際、すごく稼げているのってほんの一部のトップ層の方とかです。
また、大変さの背比べをしても、しんどさの解決はしないので「それぞれのしんどさをどう解決していくか考えることが大切」とご理解いただきたいです。
あと、夜業界で働くシングルマザーの方にも、100人いれば100通りの働いている理由・背景・性格があります。
それが、なぜか一緒くたにされてしまう。
問題・課題も「じゃあ、どうやって解決していけばいいか」を個別かつ具体的に考えていかないといけないのに、批判するだけでは何も生まれません。
批判するのであれば、「何に対して批判しているのか」「何を問題視しているのか」「どうすれば解決していくのか」という点で、一人ひとりを見ていただきたいですね。
− ReRe
実際には、どういった方面からの批判が多いのでしょうか?
− 石川さん
意外かもしれないのですけど、一部支援団体の方や同じような立場のシングルマザーであったり、男性よりも女性からの批判が強い印象ですね。
「そういう仕事は辞めなさい」「子供にとって良くない」とか。
どんなに経済的に苦しくても、どんな仕事をしていても、一人ひとりプライドってあると思うんですよ。「下に見られたくない」「バカにされたくない」とか。
そこを軽視してしまい、思いが強い分お説教に入ってしまう方が一定数いらっしゃるなと。
ただ、耳を傾けてあげないと「なぜ夜業界で働いているのか」「その人はどうしたいのか」という一人ひとりの思いは見えないですし、私はそこを大事にしたいと思っています。
− ReRe
批判するだけで、その人の希望に寄り添ってなかったり、何の状況解決も生まない批判は確かにありますよね。
簡単ではない夜業界の仕事をしながら子供を育てる、それ自体が素晴らしいこと
− ReRe
今後、長期的に見据えられている支援活動はありますか?
− 石川さん
一番大事にしているのは、横のつながり作りと専門の支援機関へつなぐことです。
近々で進めているのは、弁護士の先生が直接ご自宅にお伺いすることです。
本当にしんどいときほど「家から出られない..」とか、追い詰められて行政の窓口に行けなかったりするので、専門の先生がお伺いしてお話を聞く仕組みを整えています。
あとは、居場所カフェですね。
「いつでもお話を聞きますよ」という体制や、お子さんをお預かりして遊ばせている間にお母さんが休めたり、資格の勉強ができるような場を作りたいと思っています。
− ReRe
「お母さんが休む」という発想は、シングルマザーにはより大切なことですよね。
女子SPA!さんのインタビューでも「通い型のシェアハウスを作りたい」と述べられていましたが、それが通いカフェでしょうか?
− 石川さん
シェアハウスの中に通いカフェがあって、その中に託児スペース・お母さんが休める場・子ども食堂などがある感じですね。
今日も物件を見に行っていたのですが、近いうちに作る予定です。
− ReRe
ぜひ広がっていって、多くのシングルマザーの孤独が解消されてほしいなと感じます。
最後になりましたが、夜業界で働くシングルマザーの方、夜業界では働いていないシングルマザーの方、それぞれにお伝えしたいことをお願いできますか?
− 石川さん
まず、両方のシングルマザーに知っていただきたいのは「夜業界のキャストは簡単な仕事じゃない」ということです。
お金をいただいて働く仕事に簡単な仕事なんてないと思います。
お客様の一人ひとりに寄り添って接客しなければいけないし、趣味・好みなどの個人情報も覚える必要があります。
接客方法も変えなければいけないし、セクハラ的なことを言ってきたり、暴言吐いたり、お説教タイムに入るお客様もいる中で、自分を律しなければいけません。
けっこう精神にくる大変なお仕事ですが、そんな夜業界で働いていること自体が、私は「すごいな」と思っています。
私もキャストで働いてきましたが、「ちゃんと接客できるかな」「このお客様を不機嫌にさせたら生活が苦しくなる」という不安を抱えながら、いろいろ試行錯誤してきました。
連絡ひとつとっても、業務外で時間をどれだけお客様に割けるかが重要だったり。
そんな中、お子様を抱えて働いている方って本当にすごいな、と思っています。
休みの日はお子様のために時間を作ったり、それ自体で素晴らしいことをしている、ということをわかっていただきたいですし、自信を持ってほしいです。
そして、批判される方に関しては、動機として「夜業界は搾取・劣悪な環境で、そこで働いている方やその子どもは“可愛そうな”存在なのでどうにかしてあげたい」という思いの方もいらっしゃるかと思います。
ただ、たとえ昼間の仕事で職場に問題があった場合でも、「そんな仕事すぐ辞めなさい」と言われても、すぐには辞められないですよね。
単身ならまだしも、お子さんを抱えていたり、いろんなご事情がある中で「辞めなさい」と言われても「じゃあ、次の仕事は?紹介してくれるんですか?」ってなると思うんです。
仕事って「子供を学校に行かせたい」「子供をこういった所に連れていってあげたい」とか、皆さんいろんな理由があって働いていますね。
どんな仕事だってそうだと思います。
もし、問題があると思うのであれば、その人を批判するのではなく「じゃあ、どうすれば解決するのか」という、問題の解決方法を提示してあげてほしいな、一緒に考えていってほしいなと思います。
− ReRe
夜業界での仕事って、コミュニケーション力・傾聴力・提案力など、様々な能力が求められますし、それはもう「立派なビジネススキル」と考えていいと思います。
批判されている方には、状況を理解した上での解決策も合わせて提示してもらい、双方で建設的な意見交換がされるといいですよね。
本日は貴重なお話をお伺いさせていただき、ありがとうございました。