面会交流の方法に悩んでます..
ひとり親の経験を活かして、同じ境遇の人の力になりたい..
という方へ、このインタビュー記事をお届けします。
インタビューさせていただいたのは、家庭環境に悩む子ども・大人の支援をされているNPO法人ウィーズの永作さん。
親が離婚している子どもや、家庭環境に悩む子どもへ、無料LINE相談・居場所や学習機会の提供をされています。
また、ひとり親に対しては、支援料無料で面会交流をサポート。
「子どもたちのために命をつくしていきたい」という永作さんに、
- 家庭環境に悩む子どもへの支援の詳細
- 面会交流サポートの詳細
- 面会交流サポートを受けられた方のお声
についてお伺いしました。
「かつての子ども」だからこそできる本当の共感により、子どもの心身をサポート
− ReRe
永作さんの自己紹介をお願いします。
− 永作さん
NPO法人ウィーズにて事業マネージャーを務めております、永作真奈美と申します。
私自身はひとり親家庭に育っており、そのなかで親が3回再婚しているんですけど、3回とも離婚し、最終的には養子縁組として両親とも実親とは違う家庭で育ちました。
養子縁組のときに、すごく複雑な感情をかかえていて、心身ともに疲弊してしまい、自分の人生なんて考えられない時期がありました。
そんな中で養子縁組許可の裁判を行うことがあり、私の人生を肯定し、立て直してくださった大人の方々・社会の仕組みと出会いました。
そのおかげで自分自身の人生を取り戻したり、今こうやって自分のやりたいことを叶えられるようになりました。
その経験から「いつか自分も子どものため、社会のために命をつくしていきたい」という想いが生まれ、現在NPO法人ウィーズの活動に携わらせていただいています。
− ReRe
ありがとうございます。
ウィーズさんの活動について、教えていただけますか?
− 永作さん
ウィーズの掲げているビジョンとして「ひとりひとりが価値ある自分を信じられる社会へ」というものがあります。
誰しも最初に所属する組織である「家庭」が安心・安全で、健全な自己肯定感を育める場所となるよう、支援を必要としている親子に介入をさせていただいています。
子どもたちが本当に自分自身の価値を感じられるよう、支援を行っている団体です。
そして、子どもの支援はもちろんなんですが、親の支援も欠かせません。
結局、親が自分の存在価値を実感していなければ、子どもに対してエンパワー(力や自信を与えること)できません。
親が生きていることへの絶望感にさいなまれないよう、親への支援もしています。
あとは、私みたいな「かつての子ども」という、家庭に安息の地がない環境で育ったり、どこかで心に傷をかかえていて、その経験をうまく浄化できていない方々もいます。
「かつての子ども」である大人たちに向けた支援も、我々ウィーズは行っています。
ウィーズは「親子の健全な自立」と「自分の存在価値を認識してもらうこと」を目指しているのですが、家庭環境に悩んでいる子どもは最初、負の感情の渦に巻き込まれています。
「自分の家だけがおかしい」「自分が悪い」「誰にも相談できない」という悩みを抱えていて、家庭内の問題も外に出にくい側面があります。
そうすると、孤独感を感じてしまい、孤独感を感じると「自分はいらない存在なんだ」と思ってしまって、不登校・自傷行為に走ってしまう子どももいます。
そして、それを見た親も辛そうな顔をしていて、子どもはさらに不安感・孤独感を強く持ってしまう。
グルグルとした負の連鎖に入り、社会的にも孤立していくことで、問題が表面化しづらくなってしまうんです。
この負の連鎖を断ち切るために、まずは「誰にも言えない」という問題を解決できるよう、辛さを吐き出せる場所としてオンライン相談・LINE相談を行っています。
あと、『みちくさハウス』という、千葉県松戸市にあるんですけど、居場所の提供もしています。
また、直接的にお話ができるような交流などもしていて、まず辛さを吐き出してもらう場を提供しています。
孤独感に対しては、ウィーズの特徴として、私みたいな「かつての子ども」が支援員としていることで、子ども時代の本当の孤独感・辛さを共感してもらえる場があります。
「自分だけじゃないんだ」と思ってもらえて、孤独感から救うような支援をしています。
子どもたちが支援員というロールモデルを見ることで「自分は今こうだけど、未来はこういうふうになれるんだ」「こんなふうに生きていけるんだ」と視野を広げることができます。
最終的には「親と子どもって家族なんだけど、違う人物であり、違う人生を歩んでいくものである」と切り分けられるようになります。
切り分けができると、子どもも親もお互いに自立して「自分には価値がある」と思える。そういった良い流れを作ることが、我々の支援活動となっています。
− ReRe
お話ありがとうございます。
本当に素晴らしい活動をされているなと、改めて感じました。
特に負の連鎖において、子どもの孤独って、ひとり親の孤独よりもさらに見えづらく、情報として拡散される機会も少ないかと思います。
その中で、子どもの問題に目を向けられ、ウィーズさんが介入することで負の連鎖が正の連鎖に変わっていく。とても本質的で、意義の大きい支援だなと思います。
子どもたちはどのようにして、ウィーズさんにたどり着くのでしょうか?
− 永作さん
検索が多いですね。
何かしら悩んだことをネットで検索して、そこでウィーズの情報がひっかかって相談を申し込まれるパターンが多いです。
− ReRe
そうなんですね。
現代っ子ならではだし、子どもも自分の境遇に「ほかの友達の家庭とは違う」と問題意識を持っているからこその検索行動なんでしょうね。
− 永作さん
本当にそうだと思います。
生きる力を育むための法 / 金銭教育を通じ、居場所・体験機会を提供
− ReRe
ほかには、どんな活動がありますか?
− 永作さん
「ワンストップ伴走支援事業」という先ほどお話した支援と、「面会交流支援事業」「教育事業」の3つの柱があります。
面会交流の支援事業では、親のカウンセリングや、面会交流における日程調整・子どもの送迎・交流の間の付き添いなどのサポートをしています。
教育の支援事業では、法教育・金銭教育を子どもたち向けにしています。
子どもの生きる力を育成したり、体験の場を提供し、孤独感の解消・人生を生き抜く力を育む支援をしています。
あと、「かつての子ども」向けに『浄化セミナー』も行っています。
小さいときの記憶・トラウマが、大人になってからのパートナーシップなどを育む上での弊害になったり、プレッシャーを過度に感じてしまいやすくすることがあります。
そこで、過去の経験を紐解いてみて、何が自分にとっての壁になっているのかを明らかにし、小さいときの経験を浄化していくセミナーとなっています。
− ReRe
教育事業において、法・金銭の教育を中心にされている理由は何なのでしょうか?
− 永作さん
法教育については、やっぱり制度を知らないと、今起きていることが良いのか悪いのか判断がつかないので、それで相談もできないケースがあったりするんですね。
「法律でこんなふうに守られているんだよ」「法律でこういうことが可能なんだよ」という知識を身につけることで、法制度を活用して環境を変えることもできるようになります。
金銭教育については、お金は生活のためには切っても切り離せないものですし、シングルの方だと生活に困窮されている方も多くいらっしゃいます。
お金へのネガティブなイメージから、進学においても「お金がないから進学はしない」と最初から決めつけてしまうケースがあったりします。
実際には、国の制度を活用したり、自分で賢くやりくりできる部分もあるので、未来を切り開くための金融の知識を身に着けてもらうようにしています。
− ReRe
法律や金融の知識って、なかなか義務教育の中では学ぶ機会がないので、貴重な場ですね。
支援料無料で面会交流をサポート!子どもへのカウンセリングも実施
− ReRe
面会交流の支援では、具体的にどのようなことをされているのでしょうか?
− 永作さん
付き添い支援・受け渡し支援・連絡調整・間接交流、の4つの種類があります。
付き添い支援は、全体の4割くらいを占めています。
同居親から子どもを預かって、別居親に会ってもらい、同居親のもとへ戻るまでずっと支援員が一緒に付き添ってサポートをします。
受け渡し支援も、全体の3〜4割を占めています。
子どもが別居親と会っている間は付き添いはせず、送迎のみをサポートするかたちです。
連絡調整は、付き添い支援・受け渡し支援のどちらにも含まれていて、全体の2割くらいとなっています。
面会交流の当日の動きは本人たち同士で行ってもらい、日程・場所の調整をサポートさせていただいています。
間接交流は、虐待・DVなどで直接会うことが認められていないケースに、誕生日に手紙・プレゼントを送りたくても、子どもの住所を明かせないケースがあるんですね。
そういった場合に、いったんウィーズに手紙・プレゼントを送っていただき、ウィーズからお子さんへお渡ししています。
だいたい最初に申し込まれるのは付き添い支援ですが、お互いにハードルが徐々に低くなり、自分たちでもやり取りできるようになって、受け渡し型・連絡調整のみに移行されるケースは多いですね。
あとは、子どもたちの成長過程によっても変わります。
お子さんが小さいときは一緒に付いて、中学生・高校生になったら子どもが一人で動けるようになるので連絡調整だけにして、ステップアップされていくパターンがありますね。
ウィーズの面会交流支援の特徴としては、支援料が無料であるところです。
ただ、離婚調停中の方へは有料となっています。
理由は、調停中って子どもたちへの精神的ストレスがすごくあるので「調停を早く終わらせてほしい」というメッセージが含まれることもあり、調停中以外の期間を無料としています。
− ReRe
面会交流の支援って、基本的には付き添い・受け渡し・連絡調整の3つだと思いますが、間接交流も対応されていて、細かい部分まで配慮されているなと感じます。
支援を受けられた方のお声もお聞かせいただけますか?
− 永作さん
最初は面会交流において、第三者を介入させることにネガティブな方も多いんですね。
ただ、ウィーズとしては子どもの気持ちにフォーカスした面会交流の支援をしていて、子どもたちへの配慮や、カウンセリングなども細やかにしています。
その結果として、面会交流がスムーズになったり、子どもが一番良い状態で当日を迎えられて「ウィーズさんに介入してもらって良かった」というお声を頂くことが多いですね。
あとは、面会交流によって精神的な不安の解消につながって「感情の浮き沈みが少なくなった」というお声があったり。
離婚後に話し合いがうまくいってなかったところ、支援を受けることで「相手の希望を冷静に聞けるようになった」「穏やかに話せるようになった」というお声もあります。
また、「子どもにとって何が良いのか..」ということを日々悩まれている方も多くいます。
そんな中で支援を受けたら、「やっぱり子どもが「自分が何者なのか」「親はどういう人なのか」というアイデンティティを形成するために面会交流は必要なんだなと気づいた」というお声も頂いたりしますね。
「子どもの視点でいろいろ支援をしてもらえる」というウィーズの特徴に、価値を感じてくださる方が多い印象です。
− ReRe
素晴らしいですね。
面会交流って、子どもの心身を健康に保つ上でとても大切ですし、それを実感されているからこそのお声なんだろうなと思います。
支援者募集!支援を通じて過去の経験を浄化・強みとして活かし、世の中へ貢献できる
− ReRe
支援者の方には、どのような方が多いのでしょうか?
− 永作さん
8割は、当事者の人たちですね。
私もそうですし、親の離婚を経験したり、離婚でなくても虐待を受けた方だったり。あとは、親の立場で離婚を経験した方もいます。
自分の経験を強みとして活かし、支援活動をされている方がほとんどです。
現在は支援件数がとても増えていることもあり、支援者の養成講座も行っています。
− ReRe
本当にすごく増えてますね..
− 永作さん
そうなんですよ。
2021年のオンライン相談が約1,500件だったのですが、2022年は9月時点で1,500件を超えています。
面会交流支援も、2022年は支援者不足により1〜4月はストップしていたのですが、5月の再開から9月までで、すでに2021年の400件を突破している状況です。
みちくさハウスは年間200件くらいで、最近は虐待からの一時保護など、緊急案件が増えていますね。
特に多くなっているのが性被害で、実親・養父からの性的な虐待が件数として増えている状況です。
やはり、コロナ禍で親も収入面や精神面において不安定になっていて、それが子どもへの虐待につながっているケースがあります。
あと、外に出ることが少なくなり、家庭にいる時間が増えるとイライラする機会も増えてしまう、といったことも背景にありますね。
− ReRe
そんな中、支援者の養成講座をされているとのことですが、詳しくお聞かせいただけますか?
− 永作さん
はい。
今とても盛り上がっていて、今年1月に始めたばかりで、現在3期目に入っています。
背景としては、先ほどお話しした支援件数の増加が一つ。
もう一つは、当事者の経験がある方の「なにか世の中の役に立ちたい」「自分と同じような経験をしている子ども・家庭の力になりたい」というニーズからです。
また、「支援活動を通じて、自分の経験を浄化していきたい」というニーズもあって、講座を開講しています。
− ReRe
支援員にはどのようにしてなれるのでしょうか?
− 永作さん
アクティボというサイトで募集をしています。
支援員になるためにご自身の経験を浄化していただいたり、実務ではセンシティブなケアも多くなるので、研修を受けてもらい、適正を見極めていきます。
研修は3ヶ月タームを4回ご用意しており、年間12万円の有料にはなるんですけど、今すごく申し込みが増えている状況です。
最初の3ヶ月の研修は座学で、ご自身の浄化体験をしていただきます。
小さいときの記憶や、コミュニケーション形成におけるネガティブなイメージなどを浄化するところから始めます。
あとは、OJT研修として実際にLINE相談の対応をしてもらったり、面会交流支援に付き添っていただくようなプログラムとなっています。
現在は3期を行っていて、1期目の方が現場に立っている状況ですね。
− ReRe
実際にプログラムを受け、すでに現場に立たれている方のお声・感想などはありますか?
− 永作さん
負の経験として捉えていたものが逆に役立つことで「自分の体験が世の中の力になるんだ」と気づき、自己肯定感を得ている方が多いですね。
かつ、そこで得た知識・情報・関わりが、子どもやかつてのパートナーとの関わりにも活かされて、支援を通じて自分の人生を立ち直せるところに魅力を感じていただいています。
− ReRe
支援者の方の感想が物語っているとおり、本当に価値ある活動ですね。
引け目に思えていた過去の経験を肯定でき、「意味のあることだったんだ」と思えるのは、とても素晴らしい機会なんじゃないかなと思います。
− 永作さん
起きてしまったことを良く思うか悪く思うかは、自分次第ですからね。
自分が経験したことも自分の人生の一部であり、その経験があるからこそ今役に立てている、と思えるのがウィーズの支援者養成講座の一番の特徴かなと思います。
− ReRe
もうすでに応募者の方が多いということですが、この記事を読んでいる方にもぜひご参加いただきたいなと思います。
最後になりましたが、読者の方にお一言をお願いできますか?
− 永作さん
私が自分の原体験を通じて感じたのは「母親に笑顔であってほしい」ということでした。
最初は母親側に引き取られたんですけど、母親が笑顔であったり元気であることが、子どもの一番のエンパワーだなと思うんですね。
いろんな背景があって大変な状況にいる親御さんもいると思うんですけど、親が自分の人生を諦めてしまったら、子どもも良くなっていかないし、救われません。
子どものためにも、自分自身が元気であったり、楽しめるような状況を追求していってほしいなと思います。
− ReRe
本当に仰るとおりで、親の笑顔があるからこそ、子どもは安心して目の前のことに取り組めます。
ひとり親の方には、ぜひご自身が笑顔になるための面会交流や、支援者養成講座への参加を検討してみてほしいなと思います。
本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。