女優 佐伯日菜子さん「シングルマザーになったことを “自分が幸せになるための選択” として捉えられたら」

女優 佐伯日菜子さん「シングルマザーになったことを “自分が幸せになるための選択” として捉えられたら」

母子家庭としての生活が不安..

シングルマザーだけど、自分に自信がない..

という方へ、このインタビュー記事をお届けします。

インタビューさせていただいたのは、女優でシングルマザーの佐伯日菜子さん。

1994年、映画「毎日が夏休み」で主演デビューし、日本アカデミー賞新人俳優賞ほか各新人賞を受賞。

その後も数多くの映画に出演し、近年では海外の映画祭でたくさんの賞を受賞した「僕はイエス様が嫌い」、上田慎一郎監督ら3人の監督による「イソップの思うツボ」、樹木希林さんの遺作となった「エリカ38」、2022年11月19日より公開される「森の中のレストラン」、2023年公開予定の「釜石ラーメン物語」など多くの作品に出演されています。

そんな佐伯さんにも、育児休業・女優復帰から今に至るまで、母親として、シングルマザーとして様々な不安や葛藤があったとのこと。

現在は2匹のネコたちと明るく暮らす佐伯さんに、不安や葛藤をどのようにして乗り越えてこられたのか、詳しくお伺いしました。

目次

お母さん検定があったら落第

− ReRe

お子さんが大きくなり、子育てとしては一段落かと思いますが、現在どのようにお感じになられていますか?

− 佐伯さん

小さい頃はお弁当を作ったり、学校のことだったり、細々と面倒を見ていたことが離れてからはなくなったので楽にはなりました。
ただ、もうちょっと経済的に自立してほしいな、というのはあります笑

− ReRe

そうなんですね笑

花音さんの高校卒業をお祝いされているInstagramの投稿でも、ポジティブなメッセージの中「たまには慎重に考えた方がいいですよ」という、戒めのお言葉も少し添えられていたのが印象的でした。

   
− 佐伯さん

基本、戒めますからね笑

私自身が母にとても厳しく育てられて、当時は窮屈さを感じることもあったんですけど、今はそれがものすごく有り難かったことに気づいたんですね。
『友だち親子』という言葉もありますが、「友だちとは違う付き合い方をしたいな」という思いがものすごくあって。

「わーおめでとう!ハッピー!」だけじゃなくて、「世の中っていうのはこういう厳しさもあるよ」ということは伝えていきたいんです。

− ReRe

ちょっと意外でした。
SNSの情報を外から見る限りだと、すごく仲睦まじい関係を築かれていて、まさに『友だち親子』のように映ったんですよね。

ただ実は、教育方針として「厳しさもしっかり伝える」ということを大事にされてきたんですね。

− 佐伯さん

でもなんか、けっこうなめられてますよ笑

長女が中学生くらいのときに「ママって、お母さんっぽくないよね」って言われたことがあるんです。
「お母さんっぽさ、ってなんだろう?」とすごく思ってて。

確かにそう言われると、友だちとかは「お母さん」って感じで、家族のことを考えながら働いて、趣味も充実させてる方が多いんですけど、それに比べたら私は自由にやってる感じはあるかもって。

− ReRe

佐伯さんのnote『母の日だから私は』でも、そのエピソードについて書かれてましたよね。
「お母さん検定があったら一生資格が取れない」という。

読んでみて、この記事がとても好きになったんです。
「しっかりお母さんをやれてる自信はなくても、それでいい」と思わせてくれて、温かく背中を押してくれる記事だなと。

− 佐伯さん

私いろいろと不器用な人で、お弁当も可愛く作れたりしないし、良妻賢母って感じでもないんですよ。
不器用ながら、できる範囲のことしかできなかったので「お母さん検定は落第だ」っていう文章になったと思うんです。

本とかネットとか見てると、みんながスーパーお母さんに見えたんですよね。
昔はそれで、「みんなすごいなあ.. 私にはできないな..」と落ち込んだこともありました。

けど、本当は「みんながそうじゃないよ」ということを伝えられたらなと思って書きましたね。

− ReRe

仰るとおり、SNSなどの画像・動画を通じ、ほかのお母さんのキラキラした様子がダイレクトに伝わって、ギャップを感じてしまいやすいのが現代なのかなと。
けど、本当はそんな人たちも苦労してる話があり、ただ表には出さないだけで、実際はみんな同じだと思うんですよね。

「今の自分を良しとしていい」ということは伝えていきたいですし、それが佐伯さんのnoteにも表れていたのかなと思います。
   

できないなら、できないなりに

佐伯日菜子さん:できないなら、できないなりに

− ReRe

佐伯さんも、そうやって悩まれていた時期があったんですね。

− 佐伯さん

いっぱい悩んでますよ笑

幼稚園の役員になったとき、周りの人たちが「これが終わったら次これをしよう」「ここはこう工夫しよう」と驚くほどテキパキ働いてて。
けど、自分は何にもアイデアを出せず、「私って、なんてデクノボウなんだろう..」って打ちひしがれてましたね。

私って何にもできないな..」って。
「いくらアカデミー賞新人賞をとったことを褒められようと、こういうことができないと意味がないんじゃないか」ってくらいに思っちゃったんです。

− ReRe

けっこう思いつめられたんですね。
そのあと、どのように乗り越えていかれたんですか?

− 佐伯さん

見て覚えるしかなかったですね。
ほかのお母さんたちの動きを見て「なるほど、そういう場合はそうやって対応するんだ」とか。

− ReRe

すぐに切り替えられた感じですか?

− 佐伯さん

いや、基本ネガティブで後ろ向きな人間なので、すごく落ち込みました。

けど、「私には無理。できません」じゃなくて「できないなら、できないなりに学んでいけたらな」と思ったんですよね。
役員は1年と決まってる中、自ら辞任はしたくなかったし、「なんとかやっていくしかないな」という気持ちがありました。

私、離婚したときもそうだったんですけど、悲しみ・怒りとかをパワーに変えるタイプなんですね。
ムカついたり、悲しいことがあったりすると、よくわからない「やってやる」みたいな気持ちが湧いてくるんですよ。

そういう場合でも、パッと切り替えられて、楽観的な人っているじゃないですか。
すごくうらやましいんですけど、私は切り替えられずにネガティブな気持ちが残っちゃって、それがパワーに変わっていく感じですね。

ポジティブな人って、私の周りにもいて「自分の推しは自分」って言うんですよ。
けど、私の場合は「私なんて..」っていう感じで、『私なんて教』の信者ですね笑
    

「シングルマザー」=「失敗」じゃない

佐伯日菜子さん:「シングルマザー」=「失敗」じゃない

− ReRe

シングルマザーでも、佐伯さんと同じ「私なんて..」という方は多いと思います。

− 佐伯さん

すごくわかります。

「シングルマザーになった」=「失敗した」という意識があるんじゃないかなと感じるんですよね。
だけど、シングルマザーになったことを「自分が幸せになるための選択」として捉えられたらいいんだろうなって思います

離婚理由が元旦那さんに自分を軽く見られるようなこと、例えば暴力・浮気・モラハラだった方もいると思います。
私の場合は「お前はダメだ」「お前なんてモテない」とか、洗脳に近いなって思ったんですけど、それで自信を失ってしまっていました。

ただ、自信を徐々に回復していければいいな、ってすごく思うんです。

仲の良い友だちと話したり、美味しいものを食べに行ったり、仕事で良い成績をおさめられたり、何でもいいんです。
「なんだ、私できるじゃん。いいじゃん私」って思える瞬間を、ちょっとずつでも積み重ねられたらいいなって。 

− ReRe

仰るとおりですね。
シングルマザーになったことは全然失敗じゃないですし、子どもにとって一番重要な「母親の笑顔」に必要な選択だった、と考えてみてほしいと思います。

そのことについても、note『傷つきすぎてしまったあなたへ。』で書かれてましたよね?
「時間は意外に優しい。」という言葉が、グッとささったのですが。

− 佐伯さん

渦中にいると、時間が止まって「ずっとこの地獄の中にいるんじゃないか」って気持ちになりがちですけど、その苦しみ・悲しみのまま時間が止まるわけじゃないんですよね。
例えば、大切な人がなくなったとき、そのときはすごくショックだし、辛いけれど、必ずいつか乗り越えられる日が訪れるものなんだと思います。

− ReRe

本当に大事な考え方ですね。
渦中の人にはイメージしづらいかもですが、苦しみ・悲しみがずっと続くわけではないことを事実として知っておくだけでも、心の負担を少し軽くできるんじゃないかなと思います。
    

離婚前の大変だった時期に、匿名で日記を書いていた

佐伯日菜子さん:離婚前の大変だった時期に、匿名で日記を書いていた

− ReRe

先ほど「いいじゃん私」と思える瞬間を積み重ねる、というお話がありましたが、佐伯さんはどんなことを積み重ねられたんですか?

− 佐伯さん

映画を見たり、音楽を聞くことが好きなので、映画・音楽には助けられましたね。
あとは、仲の良い友だちと話したり。

− ReRe

友だちと話すことで、自分の思いを外に出せますよね。
映画・音楽でも泣いたり笑ったり、感情を外に出すことが大切なのかなと思います。

− 佐伯さん

確かに。

私は離婚前のすごく大変だった時期に、ネットに匿名で日記を書いていました

仲の良い友だちには言えないようなことも、顔の見えない相手には「こういう嫌なことがあって」って言えるんですよね。
それに対し、顔の見えない相手からアドバイスをもらえたりして、とても有り難かったんです。

ブラックな自分を吐露できる場所って、いいな」と思いましたね。

− ReRe

素晴らしい方法ですね。

noteでも書かれていましたよね。
ひたすら何かに書き続けて気持ちを整理するのも良いかもしれない(私これ結構やります。)」って。

− 佐伯さん

そうそう。

書くことが好きなんです。
子供の頃からよく文章を書いたりしてて、話すより書くことのほうが好きなんじゃないかってくらい。

− ReRe

心理学の世界で「書くことがメンタルの回復に良い」と言われたりもしますしね。

− 佐伯さん

そうですね。
書いてるうちにだんたん自分を客観視できたり、「あ、こういうことを今自分は考えてるんだな」って気づけたりするので良いですね。

− ReRe

きっと、気持ちに整理がつくんでしょうね。
気持ちが沈みがちなシングルマザーの方には、ぜひ試してみてほしいアイデアです。
    

仕事を取り戻すことが大変だった

佐伯日菜子さん:仕事を取り戻すことが大変だった

− ReRe

仕事と子育ての両立に悩まれているシングルマザーの方は数多くいますが、佐伯さんもやはり大変でしたでしょうか?

− 佐伯さん

けっこう大変でしたね。
ただ、母が近くには住んでなかったものの、いろいろと協力してくれました。

− ReRe

それは、佐伯さんからSOSを発信されたのでしょうか?それとも、周りから積極的に助けてくださったのでしょうか?

− 佐伯さん

うちは、母が「大変そうだな」と気づいてくれた感じですね。

私、「自分が大変だ」ってなかなか言えないんですよ。
離婚したときも仲の良い友だちにも言えてなくて、みんなニュースで知って驚く、みたいな感じでした。

自分が逆の立場だったら全然ウェルカムなのに、人にお願いするのはすごく苦手ですね。

− ReRe

そういった方は、シングルマザーに多いと感じます。
「自分でなんとかしないと」という責任感の強さや、「お願いしたら面倒くさがられるかな」という恐怖感を、必要以上に感じてしまっている方が多い印象ですね。

それって、克服できるものだと思われますか?

− 佐伯さん

いやー、どうなんでしょう笑
持って生まれた性格ですからね笑

でも、Twitterで「パソコンが壊れた」「航空会社のチケットとれてるか心配」とか、困ったことをちょっと書いたりはします。

友だちには言えないけど、第三者・有識者に頼ることはできるかなって。

− ReRe

身近な人だからこそ頼みにくい、という側面はありそうですよね。
その意味では、第三者に頼ることとして、ひとり親向けの支援団体・サービスの手を借りることも、今つらい状況にいるシングルマザーの方には検討してみてほしいなと思います。

あと、佐伯さんがシングルマザーになって一番壁に感じたことは何でしたか?

− 佐伯さん

私、逆に結婚してたときのほうが元夫から仕事を制限されていたので、シングルマザーになってからのほうが仕事はやりやすかったですね。
ただ、長い間お休みしていると仕事ってなくなっていくので、それを取り戻すのがけっこう大変でした。

− ReRe

そうなんですね。
それは、どのように乗り越えられていったんですか?

− 佐伯さん

正直、まだ乗り越えられてないですね。

結婚して子育てをしていく中で、元夫から「仕事をあんまりしないで」と言われていたことからお断りしてしまった仕事がいっぱいあって。
そうすると、恋愛と一緒で、せっかく「一緒に仕事しようよ」と言ってるのに「できない」って言われると「なんだよ」って思うじゃないですか。

失ってしまった信頼を再構築する作業を今一生懸命やっていて、もっと忙しくなりたいですね。

− ReRe

最初に壁だと感じられたものと、今も戦われているんですね。
シングルマザーにも仕事のブランクによる不安・葛藤と戦われている方は多くいますが、佐伯さんの姿は励みになるんじゃないかなと感じます。
   

シングルマザーの方は、後悔のない生き方をしてほしい

− ReRe

一番大変だった昔の自分に声をかけられるとしたら、どんな言葉をかけますか?

− 佐伯さん

ここ数年、私の周りで若くして亡くなってしまう方が多くて「人生は長いようで短くて、短いようで長いのかもな」って思ったんです。
なので、後悔のない生き方をしてほしいなと思います。

過去の自分にも、友だちとか私の好きな人たちにも、そう生きてほしいですね。
今シングルマザーで頑張ってる方もそうだし、「離婚しようかな..でもシングルは大変そうだしな」って迷っている人もそうです。

すごく我慢してやりたいこともやれず、どんどん歳をとって身体も衰えて気持ちも前向きになれなくなるよりは、後悔しない選択をしたほうがいいんじゃないかなって思います。

人生って本当に一度きりなので、もし今自分が死んでしまったときに「まあまあOKな人生だったよね」って言えるくらい、後悔のない人生を送ってほしいなと思います。

佐伯日菜子さん:シングルマザーの方は、後悔のない生き方をしてほしい

− ReRe

そうですよね。
自分が笑顔になれる選択、自分の気持ちを二の次にしない選択が大切だと思いますし、その選択を佐伯さんはされてきたんですね。

最後になりましたが、子育てが一段落された今、これからどんなふうに人生を歩んでいきたいですか?

− 佐伯さん

そうですね、新しい出会いも当たり前的に良いと思います。
ただ、ちょっと臆病にはなりますよね。

「また失敗するんじゃないか..」とか。
経験したことを次のパートナー選びにちゃんと活かせられたらいいんですけど、なかなか難しいとも思うので。

「どうしても誰かいなきゃダメ」とは言いませんけど、縁というか、流れというか、自然なかたちで良い出会いとかがあればいいんじゃないかなとは思います。
それは自分だけではなく、シングルマザーの方にもそうあってほしいなと思いますね。

− ReRe

そうですね。
私たちのマッチングアプリにも、子育てが一段落したシングルマザーの方が多くいらっしゃって、子育て終了後の人生を一緒に楽しむパートナーを見つけるお手伝いができればなと思っています。

本日は佐伯さんの自然体で優しく、温かみのあるお話をたくさんお聞かせいただき、きっと多くのシングルマザーにとって励みになったんじゃないかなと思います。
貴重なお話をありがとうございました。

女優 佐伯日菜子さん「シングルマザーになったことを “自分が幸せになるための選択” として捉えられたら」

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