子どもの急病で、仕事を休まないといけないケースが心配..
という方へ、インタビュー記事をお届けします。
今回お話を聞いたのは、大阪を中心に「訪問型の病児保育サービス」を展開する、認定NPO法人ノーベル 広報・寄付担当の徳増さん。
訪問型の病児保育サービスでは、子どもの急な病気に自宅まで来てくれて、症状に合わせたきめ細かい保育をしてもらえます。
年収300万円以下のひとり親世帯には、低価格で利用できる「ひとり親パック」のサポートも。
「子育ては支え合うもの、という考えが広がってほしい」という徳増さんに、活動の詳細や想いをお聞きしました。
※動画で視聴したい方はこちらからどうぞ
当日朝8時までの予約で100%保育に駆けつけ
− ReRe
ご活動内容について、教えていただけますか?
− 徳増さん
ノーベルは、大阪市を中心に周辺の16自治体で「訪問型病児保育」というサービスを提供している、子育て支援団体です。
具体的に言うと、お子さんが急に病気になったり、熱を出したりした時に「働きに行かないといけない親御さんに代わって、ご自宅で保育をする」という事業で、これまで設立から15年で2万件を超える保育を提供しています。
私は、ノーベルで広報と寄付担当をしています。
− ReRe
病児保育のご活動について、詳しくお伺いしてもよろしいですか?
− 徳増さん
ノーベルの最大の特徴は「当日の朝8時までの予約で100%保育に駆けつける」というところです。
お子さんって深夜に熱が出たりなどして、早朝バタバタしながら施設型の病児保育などに慌てて「予約できますか?」と電話して「仕事に行きたいけど、なかなか預け先が見当たらなくて仕事に出られない..」ということもよくあると思います。
その点、ノーベルでは感染症の時期に関係なく、当日朝8時までの予約で100%お伺いしています。
「共済型」といって、保育を使っても使わなくても、毎月決まった金額をお支払いいただいて、皆さんで病児保育の経費を出し合うことで実現しています。
− ReRe
毎月一定の金額で利用できるのは、とても便利ですね。
利用された方からは、どんなお声が届いていますか?
− 徳増さん
病児保育を利用された方からは、「何かあっても大丈夫、って安心できて、すごく助かります」というお声をよく頂きます。
あと、お子さんにとってもご自宅でストレスがなく、負担の少ない環境でなおかつ一対一の保育なので、お子さんにとっても普段とは違う特別な体験になっているようです。
親御さんが、毎日の生活がバタバタしていてお子さんとじっくり向き合う時間が限られていたり、保育園で集団保育だったりすると、一対一で大人とマンツーマンで遊んでもらえる時間はあまりないと思います。
その点、ノーベルのスタッフはお子さんに人気で、一日向き合って遊んでもらえることが、お子さんにとっても貴重な経験になっているようです。
− ReRe
体調が悪くても寄り添ってもらえる大人がいる、という経験も、お子さんにとってはすごく大きいですね。
− 徳増さん
そうですね。
「ノーベルがあったから、働き続けられました」というお声はたくさん頂いており、「なんか一緒に子育てをしてもらっている感じで、嬉しいです」というお声もありますね。
低価格で利用できる「ひとり親パック」
− ReRe
利用料金について、教えていただけますか?
− 徳増さん
ノーベルには「必要としている方には、いつでも病児保育が使えるようなセーフティーネットを作っていきたい」という思いがあります。
その取り組みの一つとして、ひとり親のご家庭・障がいのあるお子さんがいるご家庭には、安く病児保育を提供するために寄付を集めています。
その金額が、ひとり親のご家庭は月会費1,000円で、さらに月1回分の保育料は無料でご利用いただいております。
月2回目以降は、1時間1,000円の保育料でご利用いただくような取り組みになっています。
特にひとり親のご家庭の半数は、非正規雇用で働いています。
0歳児だと「病気で年間30日間は保育園をお休みする」と言われており、その日数の分、親御さんが仕事を調整しなければいけなくなります。
子どもの病気を理由に仕事をお休みすると、その分の給料が減って、生活に直結するんですよね。
そういうご家庭に「病児保育を安くご利用いただくことで、安定した生活が送れる環境を提供する」ということを病児保育を通じて行っています。
病児保育を通じて年収が上がり、子どもとレジャー施設に行けるようになった方も
− 徳増さん
とあるひとり親の方は、ノーベルを利用する前は頻繁に子どもの病気を理由に仕事を休まないといけなくて、明日のご飯も困るぐらい困窮していたそうです。
そうした中、ノーベルを使っていただくことによって、子どもの病気を理由に仕事を休むことが減り、職場での評価が上がって「アルバイトから契約社員に上がりました」といった嬉しいご報告がありました。
契約社員になったことで年収が上がり、これまで全然連れていってあげられなかったレジャー施設に「1シーズンに1回ぐらいは連れていってあげられそう」とおっしゃっていました。
また、「誕生日にケーキを買う、ということもしてあげられそうです」ともおっしゃっていました。
そういったお声もあり、より「病児保育って必要だな」と感じているところです。
− ReRe
お休みの調整って、親御さんのキャリアに直結する問題だと思うので、その問題の解決につながる素晴らしい活動ですね。
ひとり親の貧困は自己責任ではない
− ReRe
ひとり親家庭がおかれている環境について、どのようにお感じになっていますか?
− 徳増さん
私は寄付を集める担当なので、いろんな方にお会いして、ノーベルのサービスについて発信しているんですけど、中には「ひとり親の貧困は自己責任じゃないか」と言われることもあります。
ただ、私は「そうじゃなくて、構造的な問題・社会問題があるからなんだ」とお伝えしたいなと思います。
よくひとり親の方について「子育てが大変だから働いていないんじゃないか」と言われることもあるんですけど、全然そんなことはなく、日本の母子世帯の就業率は86%とすごく高いんです。
一方、半数は非正規雇用で、母子世帯の平均年収が約230万円となっています。
その中で特に問題になっていることが、子どもの病気を理由に仕事を休まないといけなくなると、その分年収が減って生活に直結するということです。
こういったことなどが理由で、日本の母子世帯は先進国の中で就業率が最も高い水準なのに、貧困率も突出して高いんです。
これはひとり親の責任ではなくて、子育て世帯への理解がなかったり、情報が必要な人に届いていなかったりすることが背景にあるのでは、と考えています。
私はノーベルで働き始めたのが去年の夏なんですけど、その前は転職活動をしていまして、やっぱり女性っていうだけで「なんで女性なのに、わざわざ正社員で働きたいの?」といった質問をされることが複数社からありました。
子育て中の女性だと、より転職活動もハードルが高いだろうなと感じましたし、それがひとり親世帯となると、物理的な制約だけでなく、社会に理解が広がっていかないと、ひとり親世帯の貧困、子どもの貧困の問題はなかなか解決しないなと感じています。
ひとり親の方には、「貧困は自己責任じゃないんだ」っていうことを知っていただきたいなと思います。
− ReRe
徳増さんのご経験の中で、いろいろ感じられたことがあったんですね。
子育ては当たり前に人を頼っていい
− 徳増さん
ひとり親の方のお話を聞きますと、「助けてくれるっていう人がいても、自分が返せるものがないから遠慮して頼れずにいる」といった気持ちがあるようです。
また、「親族に頼れなくて全部自分で抱え込んでいます」とか、「支援とか仕組みがあることを知っていても、仕事と子育てでいっぱいいっぱいで、自分が我慢すればいいか」とか。
支援があっても使わなかったり、使えずにいたりする場合があり、いろんな問題があるなと思っていますので、一人一人がアンテナを張って、まずはこういう問題の存在を知ることが大事かなと思います。
− ReRe
日本って「家庭の中でちゃんと解決しよう」みたいな考え方が根強い気がするんですけど、それもあって、ひとり親の方が自分一人で抱え込んでしまうような側面もあるのかなと。
− 徳増さん
一人での子育てはやっぱり難しいと思います。
地域・社会で子育てを支え合えるような、それが当たり前な社会になるといいなと思ってます。
病児保育もそうなんですけど、最初の1回目を使ってもらうまでのハードルが少し高くて、やっぱり罪悪感というか「子どもの体調が悪いときに病児保育サービスを使うのはどうなのかしら」という親御さんもいらっしゃったりして。
そもそも子どもを預ける経験がなくて、不安を感じていらっしゃる親御さんもいたりします。
ただ、1回使っていただくと、何回もご利用いただけるようになるケースは多いんです。
最初の1回を使っていただくまでは「母親が子育てしないといけない」という固定概念があったりするので「子育ては当たり前に人を頼っていいんだよ、支え合うものなんだよ」みたいな考えが広がるといいなって思います。
− ReRe
本当におっしゃるとおりですね。
最後にひとり親の方へ、何かお伝えしたいこと・知ってほしいことはありますか?
− 徳増さん
ひとり親の方とお話しすると、こういったノーベルの月1,000円でお安く病児保育をご利用いただけるサービスって、そもそもあまり伝わりきっていない、発信しきれていないという問題意識があります。
まずは、「子どもは小さいころは頻繁に熱を出して、それは子どもの成長の過程で大切なこと、当たり前のこと」という事実を知ってもらえたらと思います。
そして、子どもが熱を出したときのために病児保育サービスがあること、またノーベルだと朝8時までの予約で100%駆けつけられる仕組みが整っていることを知ってほしいと思います。
その次に、周りで必要とされている方がいたら、ちょっと声をかけてみて「ノーベルって知ってる?」みたいなかたちで話題にしていただけると、より多くの病児保育を必要としている方に支援が届けられるかなと思っています。
− ReRe
お母さん同士のネットワークでいろんな方に広がっていくと、支援を受けられる方も増えていきそうですね。
徳増さん、本日は貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。
» 参考:【まとめ】シングルマザーの支援団体10選【活動内容・場所・料金など】
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