いずれはパートナーと再婚したい
ステップファミリーですが、旦那と子どもの関係性に悩んでます..
という方へ、このインタビュー記事をお届けします。
インタビューさせていただいたのは、ステップファミリーの支援をされているNPO法人M-STEP副代表の平田さん。
日本では貴重なステップファミリーの支援団体として、子連れ再婚家庭でそれぞれが抱える悩みに寄り添い、カウンセリング・交流支援などのサポートをされています。
「血縁関係にこだわらず、明るく楽しい、新しい形の家族を構築していくお手伝いをしたい」という平田さんに
- ステップファミリー支援の詳細
- 支援を受けられた方の声
- ひとり親がステップファミリーを学ぶ重要性
についてお伺いしました。
夫婦間の気持ちをすり合わせるためのカウンセリング
− ReRe
M-STEPさんについてや、平田さんの自己紹介をお願いします。
− 平田さん
M-STEPは、子連れ再婚家庭・ステップファミリー・ひとり親家庭の恋愛と再婚を応援している団体です。
私も中学生のときに両親が離婚して父子家庭で育ちながら、別居して再婚した母親のもとへも行ったり来たりして暮らしていた、ステップチャイルド(継子 ※ままこ)でした。
大人になってからは、2人の子どもを育てるシングルファザーと初婚で結婚し、2人の子ども、セメントベビーが生まれ、大家族6人で暮らしていました。
※セメントベビー:子連れでの再婚・同棲のあとに生まれてきた赤ちゃんのこと
そのあと離婚し、元旦那は継子2人、私はセメントベビー2人を引き取りました。
離婚して7年が経ち、継子のお兄ちゃんは結婚し、継子のお姉ちゃんも家を出ているんですけど、セメントベビー2人は、お兄ちゃんともお姉ちゃんともパパとも自由に行き来して生活しています。
そういったステップファミリーの当事者の経験から、17年前にM-STEPを任意団体として発足しました。
そのあと、今理事長をしている新川てるえと一緒に、NPO法人M-STEPを立ち上げ、現在9年目を迎えたところです。
活動としては、月2回のオフライン/オンライン交流会や、ステップファミリーの専門カウンセラーとのLINE相談、YouTube・SNS・ブログ・メルマガでの情報発信のほか、最近ではLINEのオープンチャットも始めています。
− ReRe
ありがとうございます。
メインの活動は相談事業かと思いますが、どのような相談が多いのでしょうか?
− 平田さん
家庭内の問題についての相談が多いですね。
ステップファミリーでの夫婦関係の悩みや、お互いに子連れ再婚で継子同士のいざこざにどう対応すればいいか、であったり。
そういった相談に対し、選択理論をもとに、当事者の方のメンタルケアを重視した「100日のカウンセリングプログラム」を行っています。
− ReRe
実親と継親(ままおや)、どちらからの相談が多いですか?
− 平田さん
半々ですね。
継親の場合だと、「継子との接し方がわからない..」という悩みになります。
「最初はお友達の関係でいいですよ」とはお伝えするんですけど、みんなどうしても「父親にならないと..」「母親の役割を担わないと..」という意識が強くなりがちなんです。
特に継父(ままちち)は、家庭内で居場所がなくなる傾向があります。
継母(ままはは)だったら家で子どもと接する時間も多いですが、継父は会社にいる時間のほうが長いので、コミュニケーションがとりづらくなるからです。
日中子どもたちが何をしてるか、何が好きか、といった情報をつかむ機会も少なくなり、「仕事を頑張ってるのに、家に居場所がない..」「家に帰りたくない..」という方は多くいらっしゃいますね。
そういった場合には「お休みのときに、どこか出かけられる機会を作ってみませんか」と、継父さんにではなく、実親さんにお伝えしたりしています。
夫婦間の「自分の気持ちを何でわかってもらえないの?!」という不満に対しては、『カップルカウンセリング』という、2人の気持ちをすり合わせるためのカウンセリングを受けてもらっています。
− ReRe
2人の気持ちをすり合わせるカウンセリングというのは、具体的にどのようなことをしていくのでしょうか?
− 平田さん
ルールを決めてもらいますね。
例えば、「週に1回10分でいいから家族会議を開く」とか。
議題は何でも良くて、まずはコミュニケーションをとってほしいから「子どもたちと一緒にトランプゲームをしましょう」とか。
何か一つのことを一緒にする達成感を、それぞれが感じられるようなアドバイスをさせていただいています。
あと、実親から継親と継子へ「一緒にレジャー施設に行っておいで」と送り出してもらったりだとか。
もちろん、やってみてと言われても「どうしよう、できない..」と躊躇してしまう方も多いので、そう言えるようになるまでのメンタルケアをしています。
− ReRe
すごく重要なフォローですね。
確かに夫婦だけだと、家族会議にしろ、レジャーへ出かけるにしろ、二の足を踏んでしまう方は多いと思います。
そこへ、ステップファミリーの専門家に介入してもらうことでやり取りがスムーズに進むので、相談する価値は大きいなと感じます。
ひとり親の段階でステップファミリーを知ることで、いざ困ったときに相談できる
− ReRe
実親からの相談では、やはり「継親と子どもの仲がうまくいってない」という内容が多いのでしょうか?
− 平田さん
それも一番の問題ではありますね。
特にシングルマザーの場合だと、ひとり親家庭のときに自己肯定感が低くなってしまっている方が多いんですね。
そうすると、「次は失敗したくないから、なんとかこの人とうまくやっていきたい」とパートナーの顔色をうかがうケースが多くなるんです。
「料理の味つけが違う」「洗濯物のたたみ方が違う」「子どもたちがうるさい」といったことを言われて、生活においてパートナーと子どものどっちを優先するべきか、実親の方ってものすごい悩むんですよ。
そこで「今度は絶対に失敗したくないから」となると、子どもが継親から虐待されても見過ごしたり、それでいいものと思い込んじゃって、事件になってしまったり。
なぜ自己肯定感が低いかというと、「離婚=失敗」というイメージがあり、さらに嫌な思いをして離婚されているので、そこで自己肯定感が下がってしまうからなんです。
自分に自信がない状態で出会ってしまった男性を「私のことを守ってくれる!」と思ってしまったら、どうしても男性側に頼りたくなる気持ちが生まれやすくなります。
ただ、いざ結婚してみたらモラハラっぽい。
気づけばいいんですけど、気づかずに旦那さんの言うことを聞いてしまい、子どものご飯はほんのちょっと、といった危ないケースも少なくなかったりします。
− ReRe
すごく難しい問題で、何か一つのアイデアだけでは解決できない複雑さがあると感じます。
難しいとは思いますが、そういった相談があった場合、まず何から始めていくのでしょうか?
− 平田さん
結婚前でしたら「ステップファミリーってこういう家庭で、今は自己肯定感が低くなってるから、私たちとお話し、ステップファミリーについて学びましょう」とお伝えします。
あと、相談してくれたひとり親の方が「この男性でいいのかな」という気持ちを自分で確かめられるように、自分を整える作業を一緒にしていきます。
すでに結婚されていて「夫婦関係を良くしたい」という場合には、私たちステップファミリーの専門家のカウンセリングを受けてもらい、じっくりお話を聞きます。
そこでもし、アザ・ネグレクトが発見された場合は、児童相談所に相談するケースもあります。
DV・モラハラを受けてる方って、自分ではその状態に気づきにくく「私にはあの人が必要で、あの人には私が必要」とマインドコントロールされていることがあるんですね。
それはステップファミリー内でも起きていて、マインドコントロールで洗脳されてしまった状態からいかに解放できるかを考えて、日々カウンセリングを行っています。
− ReRe
マインドコントロールされてしまうと、現状の異変に自分では気づけなくなる面もあると思いますが、皆さんどういったタイミングで相談されているのでしょうか?
− 平田さん
切羽つまった状態で来られますね。
無料の電話相談なども、泣きながらかかってきたりします。
もっと早く相談してもらえたら、とは思うものの難しい部分はありますね。
悩みがないところでは相談しないでしょうし。
− ReRe
確かにそうですね。
ただ、今は相談しようと思ってなくても、子連れ再婚ではそういった問題が起きる可能性があることを、ひとり親の段階で知っておくことは重要そうですね。
問題が起きたときに「そういえばステップファミリーの相談ができる団体があったな」と思い出してもらえるよう、事前に知っておくことが大切なんだろうなと感じます。
− 平田さん
そうですね。
ひとり親の支援団体や行政って、子連れ再婚したら、そこで支援が止まっちゃうんですよ。
「結婚おめでとう」で終わっちゃって、その先で問題が起きたときに相談できる場所がなくなってしまうのが、ステップファミリーの現状です。
なので、ひとり親の方へステップファミリーについての情報を拡散することが重要だと思っています。
− ReRe
本当に仰るとおりですね。
私たちもひとり親向けメディアとして、ステップファミリーに関する情報をしっかりと伝えていかなくてはと、改めて思います。
相談者の声「悩みを共有できる存在がいてくれて心強い」
− ReRe
カウンセリングを受けられた方の声について、教えていただけますか?
− 平田さん
「明るく元気に生活できるようになった」という声はたくさん頂いていますね。
「家庭内が変わった」「家族が明るくなった」とおっしゃっていただいたり。
「悩みを共有できて、心強い存在になっています」と言われる方は多いです。
あと、ひとり親の方は「ステップファミリーについて勉強しておいて良かった」と言われますね。
いざステップファミリーになって、つまづくことがあっても「M-STEPに相談しよう」と思ってもらえたり。
交流会もアットホームな雰囲気なので、友だちができたりして、密な相談や「こんな話ができました!」というお声も頂いたりしていますね。
カウンセリングを受けたあとも、前向きになった気持ちが落ちないように「こころのトレーニングジム」というオンラインサロンを開設していて、元気を保ってもらうようにしています。
逆に「今、不満を吐き出したい!」という方には、LINEのオープンチャットにぶわーっと書いてもらいます。
自分の思いをLINEに書いて可視化し、みんなから共感のメッセージが届くことでスッキリされる方もいます。
そうならなかった人にも無料相談・カウンセリングを受けてもらい、同じ当事者であるカウンセラーが励まし、共感して元気を与えることで「ありがとうございます」というメッセージを頂いています。
− ReRe
横のつながりも感じながら気持ちを吐き出せて、日々の生活へポジティブに向き合っていける。
とても素晴らしい活動だなと感じます。
ステップファミリーで親の笑顔が増えると、子どもにとっても良い成長へとつながりそうですね。
− 平田さん
そうですね。
お父さん、お母さんがニコニコしていると、子どもたちも不安になりませんしね。
M-STEPでは『当事者の方が孤独にならないサポート』を掲げているので、なるべく孤独にならないように「交流会もどうぞ」と案内しています。
− ReRe
ステップファミリーの支援団体って、ひとり親の支援団体と比べても圧倒的に数が少なくて貴重なので、M-STEPさんの存在意義はとても大きいと思います。
子どもが安心して話せる環境作りが大切
− ReRe
平田さんは、子どもと親、それぞれの立場でのステップファミリーをご経験されていますが、今ステップファミリーで暮らしている方へ、何かアドバイスはありますか?
− 平田さん
子どもの気持ちについては、継親もそうですが、実親がくみとってあげることが大事かなと思います。
子どもって「それはやっちゃダメ。こうしなさい」と否定されると、どうしても反発したくなります。
一度子どもの気持ちを受け止めていただいて、「こういうふうに思うんだけど、どう思う?」と聞いてもらうことを、実親と継親の方にはしてほしいですね。
あと、子どもが話せる環境をたくさん作ってほしいです。
子どもって、自分の思いに嘘ついたりするんですよ。
「お母さんが幸せだったら、自分が我慢すればいい」とか。
そこを、子どもが安心して話せる環境を作ってあげることで「話していいんだな」「こういうこと言ってもいいんだな」と思えます。
もちろん、言っちゃいけないことは「言っちゃダメだよ」と教えてあげたほうがいいんですけど。
言っちゃダメなことのラインも実親と継親で統一し、一貫性のある声かけをしたほうがいいです。
「お母さんはいいって言ったのに、なんで継父はダメなの?」と混乱しちゃうので。
夫婦間においても、継親と継子の関係においても、個々の人間関係を大事にしてほしいですね。
血縁関係がある親子って、関係性ができあがってるじゃないですか。
でも、継親と継子は関係性ができあがってないので、無理にすりあわせようとすると摩擦が起きます。
なので、先ほどお伝えしたような「どうしていきたい?」「何をしたい?」という会話を小さな頃からしていって良いと思います。
同じ屋根の下で暮らす家族なんだけど、それぞれ違う人格でいて良いし、やりたいこと・好きなことも全然違ってて良い。
それぞれが自分の大事なものを壊さずに、どうやって満たしていくか、家族内で調整することが必要だと思っています。
その意味でも、2週間に1回とかでいいので、何かみんなでやれることを増やして、達成感やチームワークを感じられる機会を作ってみてほしいですね。
うちの場合は「誕生日は必ず予定を空けておく」とか、行事ごとに家族でいろいろやることを決めてました。
何か一つの家族として「どういうふうになりたいか」「どうしたらいいか」ということを話し合う家族会議がオススメです。
もちろん、なかなか難しい部分もあるとは思います。
「継母がイヤだ」「継父が嫌い」とか言われると、声かけも難しくなったり。
けれど、私たちのような応援団がいれば「頑張ろう」と思えます。
「ダメでもいいし、やってみることに価値があるからね」と、できうる限りの応援をさせてもらっていますね。
− ReRe
難しいものを「難しいもの」と認めて、できること・活用できる支援を見つけていくことって、とても大切ですよね。
その意味では、ステップファミリーについても、M-STEPさんのような支援団体と二人三脚で向き合うことを前提にしてしまっても良いのかなと感じます。
最後になりましたが、読者の方に向けて、お一言をお願いします。
− 平田さん
ひとり親家庭のときからステップファミリーについて学んでいただきたいのと、ステップファミリーになってもお仕事を続けていったほうが経済的にも豊かになると思います。
家族として成り立つには、個々の思いを尊重できるような相手と一緒になったほうが良いですし、一緒になってから「問題あるな」と気づいたときは、私たちのような支援団体を活用いただけたら嬉しいです。
− ReRe
ステップファミリーで困ったことがあったら、ぜひM-STEPさんに頼っていただきたいなと思います。
本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。