ステップファミリーの支援団体SAJ緒倉さんに聞いた、相談者の多くが「もっと早く知っておけば良かった」と語るものとは

ステップファミリーの支援団体SAJ緒倉さんに聞いた、相談者の多くが「もっと早く知っておけば良かった」と語るものとは

またいつか再婚するかもな..

ステップファミリーですが、パートナーが子どもを可愛がってくれません..

という方へ、このインタビュー記事をお届けします。

インタビューさせていただいたのは、ステップファミリーの支援をされているSAJ代表の緒倉さん。

日本のステップファミリーの方へ、アメリカの研究・支援プログラムをもとにしたカウンセリングや、交流の機会づくりなどのサポートをされています。

「思い込みに気づけると、ステップファミリーとしてのチャレンジは愉しいものになる」という緒倉さんに

  • ステップファミリー支援の詳細
  • 支援を受けられた方の声
  • ステップファミリーにおける間違った思い込み

についてお伺いしました。

目次

インフォメーション・サポート・アドボカシーの3本柱でステップファミリーを支援

− ReRe

SAJさんについてや、緒倉さんの自己紹介をお願いします。

− 緒倉さん

SAJは、2001年6月にステップファミリーの方がインターネットを介してつながったことがきっかけで始まりました。
その中で「ステップファミリーって、どういうふうな家族関係をつくっていけばいいのかという情報が社会にないよね」という話になり、団体を設立しました。

当時、アメリカでは大人10人のうち4人はステップファミリーの親族がいる環境でしたので、「当事者かつステップファミリーの研究者」という方もたくさんいたんですね。
そこで私たちは、日本のステップファミリーが健康な家族生活を送れるよう、アメリカで作られたプログラムを譲りうけ日本版に編集し、情報提供を行い始めました。

当時から日本のステップファミリーは、孤立しがちだったんですね。

うちの家族だけがおかしいんじゃないか..」「パートナーの子どもの良い親になろうと再婚したんだけど、子どもが可愛く思えない..」とか。
悩みを抱える人たちが経験を共有し、わかちあって「ステップファミリーの健康な生活には何が大切か」ということを学んでもらえるよう、日本版プログラムを使ってサポートグループを始めるようになりました。

SAJ サポートグループ

そうした経緯があり、今のSAJはインフォメーション (支援プログラムの開発) ・サポート (当事者のサポートグループや個別相談) ・アドボカシー (社会への提言) の3本柱で活動しています。

私は、2000年に離婚し、「監護者」という子育てをする立場になり、元夫が親権者という立場になりました。
「親権の分属」というスタイルになります。

私としては離婚後も共同親権にしたかったんですが、日本は単独親権にしかできない制度なので、苦肉の策で分属にしました。
決して仲の良い離婚ではなく、とても仲の悪い状態での分属ではあったんですけど..笑

ただ、「子どものルーツを無かったことにしてはいけない気がする。子どもはお父さん側のルーツを知りたいだろうし、失いたくないのではないか」という思いがあったんですね。
私は親の離婚を経験していないので、子どもの気持ちは想像するしかありませんが、元夫への私のネガティブな気持ちとは別にしようと、ずっと関わり続けることを前提に離婚しています。

とはいえ、30歳で離婚したので「再婚も絶対あるよな」と思ってたんですね笑
けど、子どもがお父さんと関わり合う中で「再婚したら、どんな家族をつくっていけばいいかわからないな..」という悩みが漠然とありました。

そこで、流行り初めのインターネットで調べたところ、団体としてちょうど立ち上げのタイミングだったSAJを見つけたんです。
そして、私も参加してセミナーやイベントを重ね、2002年のサポートグループ運営からファシリテーターとして中心的に関わるようになりました。そして、2006年からSAJでは個別相談を始めました。現在、私も公認心理師として相談業務に携わっています。

また、2005年に子どもを1人連れて再婚しました。
継父がいての生活が始まるんですけど、SAJではステップファミリーの関係づくりや課題への取り組み方などの情報や経験談をもらい、家庭ではその実践ということで、深く学ぶ機会を得られました。

ステップファミリーになる前の交際段階から「継父と継子の関係って、こんなにドライなんだな」とか、わかっていても軽くショックを受けたり。
いとも簡単に、実親子グループと継親の間にインサイダー(もともといる人)とアウトサイダー(外から来た人)の構造ができあがってしまう経験なんかもあり、知識が体験に裏打ちされていくのを感じました。

私は再婚で東京から仙台に引っ越したので、全く知らない土地で右も左もわからない状態で、住環境においては私がアウトサイダー、夫がインサイダーでした。
ただ、「家族の中に入る」ということに関しては、私がインサイダー、夫がアウトサイダーだったんです。

交際段階からステップファミリーの「インサイダー・アウトサイダーの関係はこういうことなんだ」と確認しながら、今再婚して17年目を迎えています。

− ReRe

ありがとうございます。
ステップファミリーの情報って少ないですし、緒倉さんのご経験をふまえた情報提供や、SAJさんの支援プログラム・悩みを共有できる場というのは、本当に貴重だと思います。

≫ オンラインで読める「ステップファミリーを育むための基礎知識」リーフレットはこちら

SAJ リーフレット「ステップファミリーを育むための基礎知識」

各々の悩み:実親「パートナーが子どもを可愛がってくれない」、継親「パートナーが理解してくれない」

− ReRe

ステップファミリーに関する相談では、どういった内容が多いですか?

− 緒倉さん

「継親と継子の関係がうまくいってない..」という相談が一番多いですね。
相談者としては、継親と実親が約8割で、両者半々ぐらいです。

− ReRe

「継親と継子の関係がうまくいってない..」という背景には、『実親が期待していた継親と継子の関係性』と『実際の関係性』にギャップがあるからなんでしょうね。

− 緒倉さん

そうですね。

例えば、実母から見たとき、継父と子どもの関係がある程度できたとしても「実の親子のような関係性ではない・そうはなれないんだな」と思い描いた理想との違いに気づくんですね。
ちょっと何かあれば子どもが反発し、それに対して継父は「なんでこんなことも出来ないんだ」と手厳しくものを言う、みたいな。

そういったやり取りが実母にとっては「キツイな..」と思うところがあり、「なんで仲良くしてくれないんだろう?」「なんで子どもを可愛がってくれないんだろう?」という戸惑いや不安が生まれてくるんです。

継父のほうも、前の結婚で子どもがいたりするケースが多くあります。
別居父でありながら継父、みたいな。

その場合、継父もさまざまな喪失を経験しながら、継子との関係をつくろうとチャレンジすることになるんですけど。
「継親としての役割を果たせてるのかな。自分は何者なんだろう..」と悩む一方、離れて暮らす子どもへは「実親としての役割や責任は?子どもは寂しく思うんじゃないだろうか. .」と葛藤を抱えながら生活することになります。

日本の場合は「再婚して新しい家庭をつくって父親になるんだから、離れて暮らす子どもより、一緒に住んでる子どもを優先して」と周囲だけではなく、自分を愛しているはずのパートナーからも言われることがあります。
そこで、継父も辛くなって「パートナーが理解してくれない..」と相談に来られるケースなんかも多いですね。

− ReRe

とても大事なお話ですね。
例えば、シングルマザーの方だと、再婚後にパートナーがそのような悩みを抱えやすいことを事前に知っておくだけでも、問題に冷静に向き合いやすくなるんじゃないかと思います。

− 緒倉さん

家族関係をつくるって、自分とは違う人がいて、考えの違いを理解し、すり合わせていくことだと思うんです。
その大前提を忘れちゃうと、「なんでやってくれないの?!」ということばかりになっちゃうので。

ステップファミリーの中には、実親の立場もあれば、継親の立場もあり、子どもの立場もあります。
それぞれに期待するものやニーズはぜんぜん違う、という大前提を知っておく必要があるかなと思うんですよね。

− ReRe

本当に仰るとおりですね。

≫ SAJさんへのステップファミリーの相談はこちら
   

相談者「もっと早く継親・実親の思いの違いを知っておけばよかった」

− ReRe

SAJさんに相談に来られた方のお声・感想についても、共有いただけますか?

− 緒倉さん

結婚前から継親・実親それぞれの思いが違い、どうぶつかりやすいのかを知っておけば、喧嘩せずに済んだのかも」とか。
「パートナーとのコミュニケーションの質が全然良くなかったんだな、と知る良いきっかけになった」とか。

SAJで得た情報を家族にフィードバックした方は「ケンカをしなくなり、話し合いが上手になった」とも仰ってますね。
こうしたステップファミリーにおける知識の提供と実践にあたっての伴走に、「良かった」というお声を頂くことが多いです。

− ReRe

素晴らしいですね。
「ステップファミリーの実態について早く知っておけばよかった」というお声は、多くのひとり親にとって参考になると思います。

− 緒倉さん

相手の本当の想いって、カップルだけで話していると想像も理解もしにくいんですよね。
それが、サポートグループや相談で見聞きすると「パートナーってこんな気持ちになってたんだな」「何が言いたかったのか初めてよくわかった」と言われますね。

− ReRe

問題が起きたときに伴走してくれる存在って、とても重要ですよね。
ステップファミリーの支援団体は数が少ないので、その重要性はより大きいですし、多くの方に「伴走してくれる存在がいる」ということを知ってもらえたらと思います。

また、ひとり親の方に知ってもらいたいことでいえば、SAJさんのホームページに書かれてある「ステップファミリーにおける間違った思い込み」がとても参考になりました。

<ステップファミリーにおける間違った思い込み>

  1. 一緒に暮らせば家族になれる
  2. 初婚の家族と同じような親子関係・家族関係をめざすべきだ
  3. 継子をすぐに愛することができる。子どもも継親を親として認めるはずだ
  4. 親の離婚・再婚を経験した子どもたちは、その後の人生でもずっと心理的な傷から回復できない
  5. 「意地悪な継母」というおとぎ話にみられる悪いイメージは、現代のステップファミリーには何ら影響を与えてない
  6. 離れて暮らすもうひとりの親に会わせないほうが、子どものためによい
  7. 離別より死別のステップファミリーのほうが楽である
  8. 何を差しおいても継子を優先するべきだ
  9. 継子が面会交流に来たときだけの継親役は、同居の継親よりも楽である
  10. 再婚前から子どもと同居している親は、一貫して親でありつづけるので、ステップファミリーになっても子どもに対して特に気をつけることはない

この貴重で有益な情報も、多くの方に知ってもらえたらと思うのですが。

− 緒倉さん

ありがとうございます。

思い込みや家族神話は誰しもあるもので、その人が悪いわけではないんですけど、それが根本的な理解を妨げたり、他者への押し付けになってたりすることはあります。
「こうあるべき。こういうものでしょ。」と思い込んでいたことに気づけると、違う選択・工夫ができるんですよと紹介しています。

ステップファミリーでの葛藤って、家族神話の土台になる文化に影響される部分も大きいのですが、文化は人の手で作られていて、身近なレベルであれば自ら変えていけるものですよね。
思い込みに気づけると、ステップファミリーとしてのチャレンジは愉しい、面白いものになるんじゃないかなと考えています。

− ReRe

素晴らしい考えですね。
私たちも文化を変えていく一助となれるよう、情報発信にチャレンジし続けたいと思います。

≫ SAJさんへのステップファミリーの相談はこちら
   

『もうひとりの親はいないもの』ではなく、継親の『親になる』という期待を下げる必要がある

− ReRe

SAJさんのホームページに、2つの家族モデル(代替モデル・継続モデル)について書かれているページもあったかと思います。

<2つの家族モデル>

≫ 代替モデル/スクラップ&ビルド型
実親はいなくなったパートナーに代わって新しいパートナーを位置づけ、継親は実親のような役割を期待され、子どものもう一人の実親は子どもの人生から姿を消すものとされる。

≫ 継続モデル/連鎖・拡張するネットワーク型
別居親も子どもの親としての役割を継続することを期待され、継親は別居親に入れ替わるのではなく、親とは違った、おじさんやおばさん・友達のような存在となる。

欧米では別居・離婚しても親子関係を維持する人が多数派を占める中、日本では継親が「親」に入れ替わるという考え方が多数派であり続けている。
けど、本来は子どもの良い成長には継続モデル/連鎖・拡張するネットワーク型が推奨される、ということを多くの方に知ってもらえたらと考えているのですが。

− 緒倉さん

そうですね。

日本の社会における離婚というライフイベントでは、制度的に「ひとり親」が存在し、「ひとり親」を中心に手当・制度の仕組みが出来上がっています。
しかし、そもそも親はもう一人いて、子どもにかかるケアの担い手が減らないよう、それに対して手当すべきはずなのですが、「もう一人の親はいないもの」としてサポートされてしまうので..

例えば、ステップファミリーって児童相談所などが代表する児童福祉領域ではリスクの一つに挙げられるんですけど、そこでは「もうひとりの親はいないもの」と捉えられがちです。親権者ではない、ということも理由にあるでしょう
継親と継子の関係がうまくいってない場合に、子どもを保護して措置を行ったあとに家庭復帰させるんですけど、そこでも「もうひとりの親」はいないんです。

家庭でのギスギスした関係は改善されてないのに、ステップファミリーのカップルが「子育てについて悔い改めた」という姿勢が家庭復帰の要件となるんです。
「もう暴力はしません」という約束だけ取りつけても、継親の「親にならねば」という意識が変わっていなければ、問題は自ずと再燃します。親になろうとするほど、継親も子どもも違和感を強めますし、その違和感は言語化がとても難しいんです。

そもそも継親は「親」ではなくて、もう少し柔和な関係をとり、「親になる」という期待を下げる必要があるんですよね。

「親じゃなくていいんだよ」と。
それよりも「他人としての距離や境界を保った、適切な大人としての関わりがいい」というイメージを持ってもらえたらと思います。

そうでないと、子どもが言語化できないまま抱えている「本当のお父さん(お母さん)と会いたい」という気持ちに誰も気づけなくなってしまいます。

≫ SAJさんへのステップファミリーの相談はこちら
   

『もうひとりの親はいないもの』とすることが子どもの対人関係に及ぼす悪影響

− ReRe

「もうひとりの親はいないもの」とすることの問題解決には、ひとり親のころから面会交流・共同養育により、元配偶者との関係をないがしろにしないことが重要なのでしょうか?

− 緒倉さん

まあ、離婚したカップルにとっては面会交流・共同養育は壁もあるし、決して楽なものとは言えませんが笑
ただ、子どもの心の発達を考えたときにとても大切なことがあるんです。

心理学的な話となりますが、一般的に、子どもは乳幼児期から愛着の対象をつくっていくんです。
特に母親など、そばにいて安心できる大人との関係をつくるんですけど、その人の良い面・悪い面を受け入れて「人間って良い面・悪い面があり、全体で捉えることが大事なんだな」という心の発達を、成長につれ何回も経験して成熟させていくんですね。

けど、離れてくらす親との関係がなくなってしまうと、その親に対して「良い面・悪い面があるんだな」と思いながら成長していく経験ができなくなってしまいます。

そうすると、子どもは離れて暮らす親に対して「本当に愛してくれてるのだろうか」という寂しさから悪い面だけを見たり、もしくは逆に「きっと素晴らしい人に違いない」というファンタジーを抱くこともあります。
人に対して「良いか・悪いか」という白黒思考的な捉え方からの変化ができず、それはほかの対人関係にも悪影響が及んでしまう場合があります。

なので、子どもの心の発達を考えれば、もう一人の親を知っていく機会を継続させていくことが大事になります。
「できるだけ喪失を低減・事実を知る」ための面会交流や共同養育が大事になってくると思いますね。

− ReRe

本当に仰るとおりですね。
母親とだけ接していると、父親という他の大人との比較によって母親の良い面・悪い面を知る、という成長機会が失われてしまうので、ひとり親の方には気をつけてほしいですね。

最後になりましたが、読者の方へお一言をお願いできますでしょうか?

− 緒倉さん

そうですね‥「間違った思い込み」でも初婚の家族のような関係性を期待することが誤りであるとご紹介いただきましたが、同じような感じで「ふつうの家族になりたい」とおっしゃる方がとても多いんですよね。

でも、その「ふつう」は大体が既成の家族観だったりするわけですよね。それだと、痛みを伴ってしまうんです。合わない型に押し込もうとするように。
むしろ、ステップファミリーは「ふつう」の家族になる必要はないと思ってください。

「じゃあ、どういうふうにステップファミリーを築けばいいの?」と思われた方は、ぜひSAJへお問い合せくださいね。
ステップファミリーとしての強みや良さ、たくさんありますからね。一緒に考えてみましょう。

≫ おすすめ書籍:ステップファミリーのきほんをまなぶ 

SAJ書籍 ステップファミリーのきほんをまなぶ 

− ReRe

それぞれの家族にあった型がある、ということですよね。
適切な型を見つけるためにも、ぜひSAJさんに相談してみてほしいなと思います。

本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

≫ SAJさんへのステップファミリーの相談はこちら

ステップファミリーの支援団体SAJ緒倉さんに聞いた、相談者の多くが「もっと早く知っておけば良かった」と語るものとは

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