起業って気になるけど、子育てがおろそかになるのかな..
というシングルマザーの方へ、インタビュー記事をお届けします。
今回お話を聞いたのは、主に子育て中の女性の起業をサポートされている、一般社団法人日本女性起業家支援協会の代表理事で、日本ママ起業家大学 学長の近藤洋子さん。
ただ「売り上げ」だけを求め続けるのではなく、自分にとってのサイズと規模感の「お金と幸せ」を両立する働き方をベースに起業支援をされています。
「仕事と家庭の両方を大事にする起業を支援したい」という近藤さんに、活動の詳細や想いをお聞きしました。
※動画で視聴したい方はこちらからどうぞ
仕事と家庭の両方を大事にする起業支援
− ReRe
団体のご紹介をいただけますか?
− 近藤さん
日本女性起業家支援協会という一般社団法人で「日本ママ起業家大学」という、主にお母さんにフォーカスした起業の学校を運営しています。
男性と肩を並べてどんどん規模を拡大していくような起業ではなくて、仕事と家庭、夢と収入、どれも諦めずに確立できるような働き方を、この団体を立ち上げた2013年からサポートさせていただいています。
2013年はアベノミクスが「女性の活躍推進」をうたっていた頃で、私がスタートしたこの事業について、いろんな方が興味を持ってくださって、行政や企業の方も応援してくださいました。
ただ、言葉の端々・最後には「でもね近藤さん、年商何億とかの起業家にならないと、そんなのママごとだから」とか「”仕事と家庭を大事に”って、何かを得るためには何かを犠牲にしなきゃいけないんだよ」といった声をたくさんお聞きしました。
わずか10年前なんですけど、男性が優位な社会で、男性の価値観が当たり前でした。
でも、私もそうですけど、現場のお母さんって何も「子育てを犠牲にしてまで働きたい、売り上げを上げたい」とは思っておらず、「やっぱりどっちも大事にしたい」と思っています。
なので、「どのようにしたら両立できるのか」ということを概念だけではなく、ちゃんと仕組みに落とし込んで実践できるような支援をこの12年で試行錯誤して取り組んできました。
なかなか伝わらない価値観だったんですけど、コロナ禍で世界的にロックダウン状態になり、オンラインの扉が開いたことによって、「仕事と家庭、どっちも大事だよね」と思う方が一気に増えました。
コロナ前からロックダウン状態だったママだけではなく、男性、介護をしている方、小さい子どもたちがいらっしゃる方、それからシングルマザーと、多くの人たちへ「こういう働き方で仕事と家庭を両立できるんだ」っていう価値観が広まっていきました。
その中で、今いろんなところと連携させていただきながら、私たちの考える起業「おうち起業」というものを皆さんと手を組みながら活動しているところです。
− ReRe
支援を受けられているひとり親の方からは、どのようなお声が届いていますでしょうか?
− 近藤さん
私もシングルマザー時代があって、今は再婚しているんですけど、2015年〜2016年にウォルマートという企業様から助成いただきながら、シングルマザー支援事業を行いました。
今は日本ママ起業家大学と一般社団法人ハートフルファミリーさん、一般社団法人グラミン日本さんの三者で、「何かやりたいけど、最初の事業資金がないから何もできない..」という方へ、貸付・起業支援を通じて自立へのサポートを行っています。
「自分も何か起業できないかな」「何か起業するにもやっぱり資金がないな」と躊躇していたシングルマザーの方が、「自分も起業してみたい」とエントリーされるケースが多くなっています。
一人一人の幸せの形に合わせた働き方を大事に
− ReRe
一般的な起業塾だと、売り上げが最重要視されるイメージがありますが、近藤さんの支援は家庭とのバランスをとりながら売り上げを作っていくんですね。
− 近藤さん
そこをすごく大事にしているので、瞬間風速的に売り上げを上げて終わりではなく「いかに自分と自分の身の回りの人が幸せでいられて、持続可能か」を大事にしています。
幸せって、すごくふんわりしているんですけど、自分と周りの人の幸せの形が違うように、自分の幸せの形をいかに見極めるかが大切です。
そして、私たちには「一人一人の幸せの形が違うように、仕事のサイズ・規模感もみんな違うんだよ」ということを、実際にデザインできるシステムがあるんですね。
売り上げだけではなく、24時間をどうデザインしていくかが一目瞭然で見える化できるものです。例えば、「月収30万円ほしい」のであれば、何件販売すればいいかがわかったり。
それ以外に、例えば「週に休みは何日ほしいですか?」とか「1日の睡眠時間はどのくらいほしいですか?」「子どものお迎えや家事、育児にどのくらい時間がかかりますか?」という質問に対し、それぞれ「1時間」もしくは「2時間」と記入していきます。
最後に決定ボタンを押すと「あなたが実現したいビジネスには、このくらいの時間がとれますよ」「家族との時間はこのくらいの時間がとれますよ」ということが表示されます。
そして、表示されたものを見て、自分に一番フィットする形を決めていくことができます。
これがすごく大事で、皆さん本当に自分らしいというか、自分に一番違和感のない、納得度の高い働き方を手にすることができています。
− ReRe
まさにライフデザインということで、子育てにもちゃんと時間を割けるし、睡眠時間も取れるし、その中で起業にも時間を割けるという仕組みなんですね。
− 近藤さん
そうですね。
子どももずっと赤ちゃんのままではないので、成長とともに自分のビジネスのサイズも自由自在にアメーバのように変えていくというところが、女性らしい柔軟性のある働き方かなと考えています。
人生の主になろう!アルジプレナーシッププログラム
− ReRe
「おうち起業」以外に何かされている取り組みはありますか?
− 近藤さん
ここ12年くらい「起業家を育てる」というお仕事をさせてもらっていて、この起業家精神、平たく言えば「自分で考えて自分で能動的に動く」という力は、何も起業するしないにかかわらず、多くの人にとって必要だと思っています。
私の娘は今高校2年生なんですけど、子どもたちにもアントレプレナーシップ(起業家精神)がすごく大事だなと思っていて。
2024年からスタートしたんですが、「企業に属していても、学生でも、どんな状態であっても起業家精神を持って生きよう」ということで『人生の主(あるじ)になろう!アルジプレナーシッププログラム』というものを今展開しています。
起業する方々にも、アルジプレナーシップを育んでいただけるようなプログラムを同時に提供しています。
− ReRe
「自分で考えて動く力」が多くの人にとって大事である、というのは本当におっしゃるとおりで、素敵な取組ですね。
女性のリアルで正直な本音トークが聞けるメディア
− ReRe
他にも活動されていることはありますか?
− 近藤さん
私は学生時代、高校も大学も女子校で、今もずっと女の園で生きているというか、肩書きは「永遠の女子高の先輩」という立ち位置でやらせてもらっているんですけど、女性の生き方・人生ってすごく面白いなって思うんですよね。
結婚・出産、それから離婚を経てシングルマザー時代があり、2,3年くらい前には更年期障害で自分の人生を見つめ直すこともありました。今後も介護など、いろんな問題が出てくると思うんですけど。
男性と比べて、女性はそういったライフイベントに右往左往させられることが多い一方で、都度アップデートできる面白さみたいなものもあると思います。
そして、私の周りにはちょっと先行く面白いお姉様方がたくさんいて、その先輩方が「離婚?誰も後悔してる人なんていないよ」とか、一見ネガティブと思えるようなことも「ガハハ」と笑って話してくれる互助会みたいなものがあり、すごく助けられたんです。
それで「私だけじゃなくって、みんなにもそういう場所があったら、もっと人生をポジティブに、年を重ねるごとに前向きに面白く挑んでいけるんじゃないかな」と思い、2年前に『注ぎ足すほどに味になる加齢応援マガジン”ウナタレ”』という「ウナギのタレのように継ぎ足していこう」というコンセプトのメディアを立ち上げました。
健康のことだけではなく、「50代でシングルマザーになったからこそ新しい出会いを求めて、でも私は絶対にフランス人としか付き合わないわ!とアプリでフランス人の方と出会ってロマンスを展開した」っていう、他ではなかなか聞けないようなエピソードだとか。
「恋人はいないけど、推し活ですごく満喫してます」っていうようなお話とか。
いろんな切り口で、いろんな女性たちの人生の「あれやこれや」みたいなことをポットラックのように持ち寄って楽しめるメディアです。
− ReRe
お話をお伺いするだけで希望が持てて、元気が出そうです。
− 近藤さん
そういうふうに言ってくださる方が多くて、2023年9月23日の敬老の日にウナタレの第一弾イベントを行ったんですけど、定員60名のところがすぐに満席になってしまって。何の生産性もないんですけど、ただただ笑えるというか。
やっぱり、皆さんそういうものをどこかで求めていらっしゃるんじゃないかなって。
SNSだと盛ったり下げたりということがありますが、ウナタレは「盛りも下げもしない正直者の情報源」という立ち位置でやっているので、そこに安心感を感じていただけているのかなと思います。
− ReRe
女性って、そういう共有や共感の場を必要としている側面もあるのかなと思います。
− 近藤さん
そうですよね。
仕事やSNSだと、どう効率的に、どう合理的に、どう生産性を上げるかって話になりがちですが、実は脱生産性というか、何もない中に愛おしさ・素敵なことがたくさんあると思うので、今こういう世の中だからこそ大事だと思っています。
− ReRe
とても共感します。
ひとり親の中には、そういう余裕をなくしている方も多い気がするので、ぜひいろんな女性の話を聞いて、ちょっとでも前向きになってもらえたら嬉しいなと感じます。
自分がワクワクすることから起業の種が見つかる
− ReRe
ひとり親の方へお伝えしたいことはありますか?
− 近藤さん
「私には何もない」「何もできない」と感じていらっしゃる方も多いと思うんですけど、起業において一番大事なのは、自分がワクワクすること・モチベーションが上がることを見つけることなんです。
人って、できること・スキル・経験・資格をどれだけ持っているかにフォーカスしがちなんですけど、「それ、ワクワクしますか?」って聞くと「いや、本当はやりたくないんですよ..」としょぼーんっとされることが多くて。
「じゃあ、何にワクワクしますか?」って聞くと、「実は子どもの服を作ってるときにめっちゃワクワクするんですよ!」みたいにおっしゃられたり。
ワクワクするものと、自分が持っているいろんな資産・スキル・誰を笑顔にしたいかを掛け算していくと、情熱の炎が消えずに長く続けられる、変態性を発揮できるようなパフォーマンスの高い起業の種が誰でも見つかります。
定期的にそういったワークショップも2025年以降にやっていこうと考えていますので、「何か興味あるな」と思われましたら、日本ママ起業家大学のホームページをチェックしていただけたら嬉しいです。
たぶん、2025年2月ぐらいにはリリースできるんじゃないかなと、今絶賛準備をしております。
− ReRe
すごく楽しみです。
近藤さん、本日は貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。
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