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毎月1万円相当の食品を無償配布!グッドネーバーズ・ジャパン飯島さんが食の支援を通じて伝えたい「自己責任」の本当の意味とは

毎月1万円相当の食品を無償配布!グッドネーバーズ・ジャパン飯島さんが食の支援を通じて伝えたい「自己責任」の本当の意味とは

シングルマザーだけど生活が辛い..

子どもにご飯をいっぱい食べさせたい..

という方へ、このインタビュー記事をお届けします。

インタビューさせていただいたのは、海外と国内で貧困の子どもを支援している特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンの飯島さん。

国内では、生活に困窮しているひとり親家庭へ、生活への一助として無償で食品を提供されています。

食品の手渡しの際、ひとり親の方とスタッフの方との会話が生まれたりと、食の支援はお腹だけでなく心を満たすことにもつながっているそうです。

「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」というビジョンのもと活動されている飯島さんに

  • ひとり親向け食品支援事業の詳細
  • 支援を受けたひとり親の方の声
  • 支援活動への想い

についてお伺いしました。

目次

食べることからすべて始まる

グッドネーバーズ・ジャパン 食べることからすべて始まる

− ReRe

飯島さんの自己紹介をお願いします。

− 飯島さん

グッドネーバーズ・ジャパンで広報を担当しております飯島と申します。

グッドネーバーズは、途上国の子どもへの支援を行っている国際NGOで、世界40カ国で人道・開発援助をしています。

グッドネーバーズ・ジャパンでは「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指しています。
海外事業として7カ国でのコミュニティ開発事業(学校設立・井戸の設置など)を、国内ではひとり親向けのフードバンク「グッドごはん」の活動をしています。

緊急支援もしていて、自然災害の発生時だけではなく、紛争発生時の緊急支援として最近ではウクライナへの支援も行っています。

− ReRe

ありがとうございます。
グッドごはんについて、活動の背景・詳細を教えていただけますでしょうか?

− 飯島さん

グッドごはんについては、「日本の子どもの7人に1人が貧困」といわれている中、2017年から活動を始めました。

日本の子どもの貧困は「相対的貧困」といわれていて、海外の「絶対的貧困」のように今すぐ命に直結するケースは少ないです。
しかし、周りと比べて「自分は〇〇ができない..」という気持ちが「なんで自分だけ..?」「どうせ自分なんて..」という感情を生んでしまい、自己肯定感の低下・才能や能力が発揮できない状況につながってしまっています。

ひとり親世帯の収入についても現在調査をしていて、グッドごはんの利用者の約60%が「昨年の世帯収入が児童扶養手当なども含めて200万円以下」という結果になりそうです(現在集計中)。
2019年に同じ調査をしたときより「200万円以下」の方の割合は増えていて、コロナが影響し、ひとり親世帯の経済状況がより厳しくなっていることが現れ始めているのではと考えています。

「ママ、食べないの?」
我々の食の支援を受けられたママが、子どもから言われた言葉です。

食品の節約のために自分は食べずにいたら言われたそうで、「なんて答えたらいいかわかりませんでした」と仰っていました。
子どもにそんなことを聞かれたときの気持ちって、どんなものか計り知れないですよね。

ひとり親家庭の状況は、メディアでよく出てくる「小学生の女の子とママがアパートでつつましく、節約しながら健気に暮らしてる」みたいなものばかりではありません。
100人いれば、100通りのシチュエーション・困難があります。

親が失業していたり、子どもが乳幼児だったり、おじいちゃん・おばあちゃんと同居していたり。
借金・病気・子の発達障害・親の発達障害・子どもが3人以上いる多子世帯・反抗期・親が介護状態・外国籍で言葉の壁を抱えている.. など様々あります。

こういった要素が二重苦・三重苦としてたくさん重なるほど身動きがとれなくなってしまいますし、そのようなひとり親の方は多くいらっしゃいます。

そんな中、フードバンク事業「グッドごはん」を行っているのですが、現在は首都圏・近畿圏でひとり親家庭に毎月無償で食品を配布しています。
食品は基本的に企業・個人の方からの寄付※でまかなっていて、毎月約1,100世帯の方々に配布しています。
※食品は寄付金で購入することもあります

条件として、各自治体が発行する「ひとり親家庭等医療証」を持っている方を対象としています。
ただ、持っていない方でも、DVから逃れて実質ひとり親なのにもかかわらず、ひとり親の公的支援を受けられずに生活をされているケースや、またコロナ禍で家計が急変して困窮に陥っている場合等も、ご相談の上で例外的に支援させていただくこともあります。

− ReRe

食の支援から始められた理由は何だったのでしょうか?

− 飯島さん

食べることからすべて始まる」という思いがあったからですね。
お腹が満たされることはもちろん、食費が浮いた分を体操服の購入など別の支出に使えたり、「誰かが応援してくれてることが食品以上に嬉しい」と気持ちの面での支えにつながることもあります。

また、「支援を受けたことを生活が落ち着いたら社会に還元したい」「自分も困っている人を助けられるようになりたい」といった声を、大人やお子さんからも数多く頂けています。

個人的に心に残っているのが、小学校低学年のお子さんの「お友だちと遊ぶときにおうちにお菓子がなくてもらうばっかりだったのが、交換こできるようになって嬉しかったし、お友だちにも喜んでもらえた!」という声ですね。
「友だちと遊ぶときにお菓子がなかった」という思い出が、子どもの心に重たく残ることがあったのかなと感じ、子どもにとって嬉しい体験にできたことが私たちも嬉しかったです。

− ReRe

「まずは食べて体も心も元気になることが、前向きな生活を送る上での出発点になる」という考えにとても共感を覚えます。

≫ グッドネーバーズ・ジャパンさんの「グッドごはん」はこちらから
    

対面での手渡しが心のケアにもつながる

− ReRe

「配布する食品は1回当り1万円相当」とホームページに書かれていましたが、合っていますでしょうか?

− 飯島さん

はい、昨年1年間に提供した食品の平均を計算してみたら、だいたい1万円相当でした。
スタッフが準備する際も、1万円分くらいになるように調整しています。

− ReRe

1万円分って、相当な金額ですよね。

− 飯島さん

そうですね、受け取った方も「こんなにもらえるんですか!」と喜んでくれます。

グッドネーバーズ・ジャパン 食の支援
グッドネーバーズ・ジャパン 食の支援

− ReRe

ひとり親の方にとって、家計の大きな支えになりますね。
受け取り場所は、首都圏・近畿圏の倉庫などでしょうか?

− 飯島さん

グッドネーバーズ・ジャパンの倉庫も配付拠点のひとつではありますが、例えば首都圏であれば、5月は拠点が8ヶ所、配付日も13日間を設けました。

※参考:配布拠点

− ReRe

かなり複数回にわたっていて、週末の土曜日も配布されてるんですね。

− 飯島さん

なるべく皆さんの都合の良いときに提供したいと思っています。

− ReRe

車を持ってなかったり、自転車で持ち帰るには重いなど、アクセスが難しい方もいらっしゃるのでしょうか?

− 飯島さん

そうですね。
「遠いから取りにいけない」といった声はあるので、なるべく拠点を拡大していきたいなとは思っています。

「送ってください」という声もよく聞くのですが、コロナ対策として対応したことはあるものの、配送料がかかって支援できるトータルの人数が減ってしまうので、なかなか難しいなという状況です。

あと、対面で渡すことに「心のケアができる」という点で意味を感じています。
送るほうが、ママたちの時間的な制約や「食べ物がほしい」というニーズを満たせるのは重々承知しているんですけど。

対面のコミュニケーションを大事にしていて、なるべく顔を合わせて渡したいなと思っています。
もし「遠いから行けない」という声がたくさん集まる地域があれば、そこで配送拠点を探すといった対応をしたいと考えています。

− ReRe

「対面だからこそ心のケアにつながる」は、まさしくそうだなと思います。
送るだけだと電話・メールではわざわざ言わないちょっとしたことも、手渡しで身近な距離だからこそ言ってみようと思えて、そこでのコミュニケーションも生まれそうですよね。

− 飯島さん

確かに「もらったついでに言ってみよう」という感じで、対面だと言いやすい部分はあると思います。

レンコンを配ったとき、ある方から「レンコンを料理したことないんですけど」と言われたことがあったんです。
それで、スタッフが調理法をアドバイスしたら「初めてレンコン料理を作ってみました!」と喜んでもらえたことがありましたね。

− ReRe

対面でポロッと話した言葉がきっかけで心が少し軽くなったりすることはあると思っていて、そのことがよくわかる素晴らしいエピソードだなと感じます。

≫ グッドネーバーズ・ジャパンさんの「グッドごはん」はこちらから
    

利用者の声「あのときの食品の重さが、やる気を起こさせてくれてる」

− ReRe

グッドごはんを利用された方のお声は、ほかにもありますでしょうか?

− 飯島さん

「受け取りのときに名前と番号を聞かれ、私のことを知ってくれるだけで繋がりを感じ、生きててもいいんだと思える」
「受け取った食品が重くて何度も立ち止まりながら帰りましたが、その重さがうれしくてうれしくて。あのときの帰り道の重さがやる気を起こさせてくれて、顔をあげて行動する力を与えてくれたと思っています」
といったお声がありますね。

はがきを配って、任意でメッセージ・イラストを募集しているんですけど、そこでもママやお子さんからお礼のメッセージを頂いています。
こういったはがきは、本当に癒やしですし、スタッフも励まされています。

グッドネーバーズ・ジャパン 利用者の声
グッドネーバーズ・ジャパン 利用者の声
グッドネーバーズ・ジャパン 利用者の声
グッドネーバーズ・ジャパン 利用者の声

− ReRe

利用者の方の心からの感謝が伝わってきます。
食の支援がきっかけで「貧困から脱却できた」というようなエピソードなどはありますでしょうか?

− 飯島さん

食品の提供はあくまで貧困の解決に向けた応急処置、という認識はしているんですけど。
子どもが甘いものを食べて勉強に集中でき、志望校に合格しました!」というお知らせなどは頂いたことがあります。

あと、別の団体さんで就労支援を受けられていて「パソコンスキル・面接の対応方法を学んで就職が決まりました!」という方もいらっしゃいました。
グッドごはんも含めたいろんな角度からのサポートによって、自立に向けて踏み出されている方がいるんじゃないかなと思います。

− ReRe

本当に素晴らしいですね。
食の支援が、貧困脱却のためのスタートラインにつながっていることがよくわかります。

≫ グッドネーバーズ・ジャパンさんの「グッドごはん」はこちらから
    

メガネの無償提供など、食以外のジャンルも支援

グッドネーバーズ・ジャパン メガネの無償提供など、食以外のジャンルも支援

− ReRe

食以外の支援ジャンルについて、今後展開されるお考えなどはありますか?

− 飯島さん

まだ具体的には決まってないですが、個人的には就労支援は大事だなと思っていたり、何かやりたいなとは考えています。

小さい活動でいえば、グッドごはんの会場で人材派遣の会社さんに就労相談会を開いてもらったことは何度かありますね。
企業さんのお申し出次第なところはあるんですけど、食品配布の機会を使い、セミナー・相談会といったイベントは今後もやっていきたいです。

あと、メガネを作っている企業さんから、利用者の子どもたちに合わせたメガネを無償で作る活動を定期的にやってもらっています。

メガネって高いので、度が合ってなくてもママに言え出せなかったり、つるが折れてるのにガムテープで補強して使ってたりしている状況の子どももいました。
「メガネが必要」とわかっていても作りにいけず、視力がどんどん悪くなってしまい、目の不調が身体の不調につながってしまう恐れもあります。

経済格差は、子どもの健康格差にもつながります。
子どもの健康への支援は、メガネの企業さんとの共同事業によって取り組めているのかなと思いますし、ひとり親の方からも好評いただいています。

− ReRe

メガネをしてる子どもにとって、「きちんとしたメガネがない」というのは死活問題ですよね。

− 飯島さん

授業にもついていけなくなるかもしれないですしね。
虫歯とかでも「低所得の家とそうでない家では虫歯の数が違う」という調査データもあるので、今後いろんな方向からの支援を考えていきたいです。

そのほかでは「機会の格差」もあり、旅行やレジャーなどの体験においても経済的な状況で格差が生まれています。
旅行に行けなくても命には関わらないですけど、その子の人生や価値観の形成に関わってくるのではと思っていて。

企業さんからスポーツ観戦のチケット・工場見学などを提案いただくこともあるので、学校では得られない機会を提供できればと思っています。

− ReRe

貧困が子どもの健康や機会の格差につながっていることは、解決しないといけない重要な問題ですよね。
「就労支援は大事だな」と仰っていましたが、どのような理由からでしょうか?

− 飯島さん

まず就労だろうなと思っていて、女性の賃金が低いのは非正規労働が多いことが根本にあり、グッドごはんの利用者においても非正規の方の割合は50%を超えています。
2021年には「就労による収入が1円もなかった」という方が10%以上もいました。

シングルマザーの中には、専業主婦をしてきて40代、50代で離婚し、そのあと仕事に就くことが難しい状況の方もいます。
なので、まずは働くこと、だけでなく「子どもを育てることのできる収入と条件の仕事を持つこと、それができる環境を整えること」が最優先だと思っていて、何かしらの支援ができればと考えています。

− ReRe

飯島さんのように、ひとり親に対して100人いれば100通りの状況を理解されている方だからこそできる支援が、世の中にどんどん広がっていってほしいなと思います。

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自己責任を辞書で調べても「人に頼らないこと」とは書いてない

グッドネーバーズ・ジャパン 自己責任を辞書で調べても「人に頼らないこと」とは書いてない

− ReRe

最後に、生活に困窮されているひとり親の方、そうではないけどひとり親家庭で暮らしている方へ一言いただけますか?

− 飯島さん

生活に困窮されている方の多くが、「離婚して貧困なのは自己責任だ」という一部の人が言う意見を耳にしたことがあるかもしれません。

それを聞いて「自分のせいなのかな..」と考えてしまう方もいるんじゃないかなと思っていて。
グッドごはんの利用者にも「自分で決めたことなんだから誰にも頼らずに自分で頑張らないと、と思っていた」という方がいました。

私、自己責任という言葉を辞書で調べたことがあるんですけど、「人に頼らないこと」とはどこにも書いてないんですよ。
「自分の判断がもたらした結果に対して自らが負う責任」と書かれていて、それは「ほかの人に頼ってはいけない」ということではない、と私は理解しています。

自分がおかれた状況をどう改善していくか、どう自立していくかに加えて、誰に頼るか判断していくことも自己責任のうちなんじゃないかなと思います。

子どもと一緒に生活していくため、誰に頼るかを自分で調べて決めていくことも責任の一つだと思っていて。
そういった意味でも、頼れるところにはどんどん頼ってもらいたいなと思います。

生活に困窮しているわけではないひとり親の方に関しては、たくさん頑張って今の生活をしていらっしゃると思いますし、経済的な心配がなくても、他の悩みもあると思うので、頼れるところには頼ってください、ということは同じですね。

グッドごはんの支援者の中には「ひとり親家庭で育ってきて気持ちがわかるので支援したい」「自分自身もひとり親で、今は安定したが子どもが小さい頃は低所得で辛い思いをしたので応援したい」という方がたくさんいらっしゃいます。

もし「同じひとり親で困っている人を助けたい」というお気持ちがあれば、配布拠点の近くにお住まいの方はボランティアも募集していますし、食品のご寄付も受け付けていますので、ぜひいろんな形でサポートしていただけると嬉しいなと思います。

− ReRe

自己責任を辞書で調べても「人に頼らないこと」なんて書いてない、本当に素晴らしい考え方だと思います。
私たちもこの考え方を、メディアを通じていろんな人に伝えていきたいと感じました。

本日は貴重なお話をお伺いさせていただき、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

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