
子どもを大学に行かせてあげたいけど、お金が..
というひとり親家庭の方、



併願して受験したいけど、お母さんに苦労をかけるのは嫌だ..
というひとり親家庭のお子さんへ、この記事をお届けします。
お話を聞いたのは、ひとり親家庭を含む経済的困難を抱える家庭や不登校など教育に関わる様々な課題を抱える子ども・家庭への支援を全国で行っている、認定NPO法人カタリバの石井さんと津和崎さん。
直近では、ひとり親家庭や外国にルーツをもつ家庭などのお子さんへの伴走支援付きの給付型奨学金プログラムを始められており、活動の詳細や思いを詳しくお聞きしました。
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どんな環境に生まれ育っても未来は作れる
− ReRe
カタリバさんのご活動について、お伺いできますか?
− 石井さん
カタリバは2001年に活動を開始し、どんな環境に生まれ育っても意欲と創造性をすべての子どもに届けるべく、日本全国の様々な場所やオンラインで活動しています。
学校以外の場所や、あるいは学校や自治体と連携して子どもたちに学びを届けるプログラムを提供したり、困難な状況にいる子どもたちに対しての様々な支援活動を全国で行っています。
「どんな環境に生まれ育っても未来はつくれる」という気持ちを子どもたちが持って育っていけるように、幅広い支援を実践しています。
− ReRe
今ご担当されているのはどんなことでしょうか?
− 石井さん
私は今、奨学金プロジェクトを担当しています。
高校3年生を対象にした給付型の奨学金を提供しており、奨学金というお金の支援だけでなく「伴走支援」を組み合わせることで、学びたい子どもたちが学びを諦めずに将来の可能性を開いていけるような取り組みをしています。
− ReRe
カタリバさんの奨学金プロジェクトの詳細を教えていただけますか?
− 石井さん
奨学金を知らなかったり、奨学金を使いたいけれど、うまく活用できずに進学を諦めてしまうご家庭・子どもが一定数いらっしゃいます。
令和4年に政府が行った調査では、奨学金に応募しなかった理由として、世帯年収400万円以下の家庭では「申請のタイミングを逃した」「将来、返済できるか不安」といった声が挙げられています。
出典:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouikumirai/sozo_mirai_wg/dai3/siryou6.pdf
私たちがこれまで関わってきた子どもや家庭でも、同じような不安の声を耳にしてきました。
「学びたい」と思っている子どもが、進学を諦めなくていいように。そんな思いから、私たちはこの奨学金プロジェクトを立ち上げました。
具体的には、提出書類を少なくすること、応募の申請書類を分かりやすくすることなどの工夫をしています。
他にも、高校生には分かりにくい専門用語(多子世帯など)を使うことで複雑な印象を与えてしまい、諦めてしまうケースが多いため、簡単で分かりやすい言葉を使うように工夫しています。
また、給付型奨学金は成績が一定程度必要とされることが多いですが、そうした要件で諦めてしまう子もいるため、どんな人でもまず応募できるという点でハードルを下げることを大事にしています。




− ReRe
ひとり親の給付金も申請が難しいイメージがありますが、学生さんが申請する奨学金も難しいイメージによるハードルが高かったのですね。
− 石井さん
そうなんです。
そのため、応募前にオンライン相談会を開き、書類の書き方などを説明する機会も作り、なるべく応募しやすいようにしてきました。
奨学金に伴走支援が必要な理由
− ReRe
このプロジェクトを立ち上げた背景や課題感、思いについてお聞かせください。
− 石井さん
カタリバは25年近く様々な年代の子どもたちを支援してきましたが、大学進学を考えた際に、家庭環境がゆえにそれを諦めなければいけない子が多くいました。
経済的困難を抱える要因は、保護者の方が病気をしたり、離婚や離職、震災などで予期せず状況が変わったりなど、様々です。学ぶ意欲があっても、進学の夢を諦めざる得ない子がいました。
そんな子どもに対して、奨学金によるお金の支援はもちろん必要なのですが、それだけだと、途中で進学を諦めてしまうことがあります。
例えば、申請が大変だったり、家庭と相談した結果、働くほうがいいという結論になったりするケースがあります。
それが本人も納得した選択であれば良いのですが、周囲の意見や、外部からの影響で、なんとなく流されて決めてしまうこともあります。
そのため、申請前・奨学金採択後にも伴走しながら、自分の将来を諦めずに大学進学していくところまで応援し、将来の可能性を開いていくことができればと思い、この取り組みを進めています。
− ReRe
お金の支援だけだと、高校生がお金をどう管理していくか、という点で大変ですよね。
− 石井さん
はい、そのために「ファイナンシャル・プランニング」を一緒に行っています。
− ReRe
ファイナンシャル・プランニングと聞くと、あまり学生がやるイメージはないですね。
− 石井さん
収入・生涯年収を扱うというよりは「いまの志望校に行くとこれぐらいお金がかかって、授業料や、一人暮らしなら生活費がこれぐらい必要」といったことを具体的な数字で出していきます。
生徒と一緒に整理していくと「結構お金がかかるんだな」という気づきにつながります。
「バイトで頑張ります」というイメージしか持っていない場合も多く、実際にお金がいくら必要なのかが目の前に示されたとき、それだけでは十分でないことがあります。
そこで、バイトでどれぐらい貯められるかという話と同時に、どんな奨学金が使えるのかという情報を提供しながら、どの大学なら頑張っていけるかを整理していきます。
この進学相談とファイナンシャル・プランニングが2つの大きな軸になりますね。
− ReRe
進学相談はどのように行われるのですか?
− 津和崎さん
偏差値で進路を決めるのではなく、あくまで本人がどこを目指しているのか、現在地がどこなのかを整理していく作業をしています。
− ReRe
どんなことがしたいのかというところを話せるのですね。
− 津和崎さん
学校の先生方は、日々の空いている時間でなんとか対応されている場合も多く、進学実績のある大学についてなどは伝えることができても、一人一人と時間をかけて生徒が大学を選べるように寄り添うのが、その多忙さから難しい状況があると思っています。
私たちは情報がたくさんある中、実際その大学にかかるお金はいくらか、受験料・受験の仕方・入学後の費用を総合的に含めて「どこにしよう」ということを相談できるようにしています。




1期生の声「奨学金があったおかげで複数の受験ができた」
− ReRe
2024年度が1期目とのことですが、実際に支援を受けられた学生さんたちの変化はありましたか?
− 津和崎さん
一般受験の生徒たちは、大学1校に3万円ほど受験料がかかり、2校3校受けようと思ったらそれだけで10万円以上になるなど「受験でこんなにお金がかかるんだ」と思っていた生徒もいました。
家庭によっては「受かるかわからないところにそんなにお金がかけられるか」と考える方も少なくないため、どうしても可能性が高いところに絞って受験するパターンが多いです。
そんな中「奨学金があったことで、2校3校受けられるようになった」という声がありました。
「ここまでお金がかかるんだったらチャレンジできないかもしれない。でも奨学金があるからチャレンジできる」と、合格できるかはともかくとして、チャレンジしたいと思える大学に受験する機会を提供できたと思います。
− ReRe
チャレンジしたい大学に受験できた学生さんもいらっしゃったのですね。
− 津和崎さん
中には、ここに行きたいという志望校があるけれど、落ちてしまうと進学ができなくなるという状況で、滑り止めとしての併願先を受験することができたという例もあります。
最終的に、その学生は志望校に合格したので、併願先は辞退することになりましたが。
− ReRe
併願先を受験できることが安心材料になり、気持ち的にも全然違ってきますよね。
ひとり親家庭の課題:孤立とお金の話の難しさ
− ReRe
支援する中で、ひとり親家庭に対して特に課題に感じていることはありますか?
− 石井さん
ひとり親家庭で経済的に困難を抱えている方々は、仕事が忙しくなったり、家庭で難しいことがあったりすると「全てを一人でやらなければ」と抱え込んでしまうこともあると思います。
子どものことを思って、一生懸命いろんなことをがんばった結果、精神的に、体力的に疲れてしまう方にも多く出会ってきました。そのあたりの難しさを一緒に乗り越えられると良いなと思っています。
また、社会とのつながりをうまく持つことができずに、公的な支援があっても、活用することが難しかったり、なんとなく使うことに遠慮がちになってしまう人もいると思います。
そういう背景の中で、自分と子どもで孤立してしまう人たちも見てきました。
そういうときこそ、お互い助け合うという気持ちを持って、私たちの支援も活用いただきながら、子どもの成長を一緒に支えていければと感じています。
− ReRe
私もひとり親として、実際に自分が支援を受けられるかどうかがわかりにくかったり、書類を揃えたりする大変さを感じています。
− 津和崎さん
ひとり親家庭の方と関わって思ったのは、保護者さんが本当に頑張られていて、子どもに辛い面やしんどい面を見せないようにされているという点です。
そして、子どももそれを理解しているため、なかには「お母さんは本当に頑張っていて、お金のことを相談したいけど“もう大丈夫だよ”と言って、そこから相談が進まない」という声がありました。
これは素敵なことなのですが、いざ進学し、奨学金をもらったり、借りたときに返すのは子ども自身です。
なので、自分がいくらお金を借りていて、あるいはもらっていて、そして使うのかということを、子ども自身が把握しておく必要があると思っています。
そうした経験から、親御さんが生徒との対話の時間を少しでも作って、生徒の意思で進学できるようになっていくことが大切だと感じています。
− ReRe
お金の話は家族の中でもしづらいテーマですよね。
なかなか気軽にできる話ではない気がしています。
− 津和崎さん
奨学金が、その対話のきっかけになってもらえるといいなと思っています。
例えば、奨学金事業を始める前にキャリア伴走をしていた生徒がいました。
その子は「学費はなんとか払える」と思って大学に行ったものの、途中で払えなくなってしまい、退学せざるを得ないケースがありました。
その時、生徒は「なんで親は事前に教えてくれなかったんだ」あるいは「なんで自分は誰かに相談しなかったんだろう」と後悔が残ってしまったことがありました。
だからこそ、あくまで子ども自身が自分にかかるお金、自分が払っていくお金を把握しておいてほしいという思いがあり、この奨学金を相談のきっかけに使ってほしいです。
頑張るひとり親家庭へ「頼ることを恐れないでほしい」
− ReRe
最後に、日々頑張っているひとり親家庭の方々へ、メッセージをお願いできますか?
− 石井さん
ひとり親で頑張り続けるのは、本当に大変なことだと日々感じています。
経済的な不安だけでなく、精神的にも孤独を感じる瞬間もあると思います。
私たちはそういった方に「一人じゃない」と感じていただけるように、サービスを通じて一緒に伴走したいという気持ちでやっています。
人に頼ること・相談することを恐れずに、窓口があれば、どんどん人を頼っていってほしいです。
そして、その中で自分や自分の子どもの可能性を一緒に伸ばしていくということが、社会でできるようになっていくといいなと思っています。
遠慮せずに頼っていくこと、支援を使っていくことは、決してネガティブなことではないので、ぜひ一緒に進んでいければと思います。
− ReRe
カタリバさんには、LINE相談窓口もありますよね?
− 石井さん
はい、LINEの相談窓口から奨学金の紹介をしたり、不登校の子どもの支援につないだりすることもあります。
まずは困ったら、ぜひLINE相談をご利用ください。
− ReRe
ありがとうございます。
津和崎さんからもメッセージをお願いいたします。
− 津和崎さん
私がとても気になっているのは、やはり社会との繋がりの薄さです。
生徒たちに「相談できる人はいますか?」と聞いたとき、返ってくるのはだいたい「親」か「担任の先生」ぐらいだったりするんですね。
そうなると、意見がどうしても狭まってしまったり、偏ってしまったりする部分があると思います。
私自身が思うのは、たくさんの人と交流をしてほしいということです。
悩んでいて困難な環境にいればいるほど、色々な人と対話をして、色々な世界を知って考えを広げていってほしいと思っています。
− ReRe
おっしゃるとおり、色々な人と話す機会を持つことで、お子さんたちの可能性はより広がっていきますね。
石井さん、津和崎さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
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